バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【スーツ武器オフ会】欲無き男の唯一の願い【タイローン編】

サイレンの音が響く
俺の大嫌いな、頭に響く音
刑務官の走る音を聞きながら、俺は壁に背を預けていた

ガシャン
不意に違う耳障りな音
目を開けると、檻の中に鉄格子の扉が捨て置かれていた

「ねぇ、元気にしてる?」
無邪気を装った邪険の塊
その姿は.......動物?

「何しに、来た」
「君を助けに来たんだよ」
余計なお世話だ。口には出さないがそっぽを向く
「あなた、ここから出ようとは思わないの?欲望は?野望は?」

「あなたの願いが叶うチャンスだよ?」

「俺の、欲望?そんなもの、ない。静かに、暮らして、いたい。一生、檻の、中で、いい」
ああ、でも、もし、一つだけ、叶うなら

「兄貴達を.......」

10 吸血鬼の告白

浩太の元に現れた華村は、巌流島からの報告が既に彼の元まで届いていることを知った。
「自分で言うのもおこがましいですが、僕は外観に置いては秀でた特性を持っていました」
華村は浩太の隊士だ。故に華村は、自分の身の上をいずれ明かさなければならないだろうと思っていた。
「人を誘惑して連れ去る、吸血鬼のような存在。「忌み子」故、僕はそう呼ばれてました。乙哉君に素質を見破られた時、ああ、やはり僕はそういう運命なんだな、と思ってしまいました」
「「美麗」の素質。美しさであらゆるものを引き付ける素質……。難しいね」
「ええ。僕も掴みあぐねていますから」

 

「好きでこんななりになったわけではないのに」
そう言って落ち込む華村の背を浩太は撫でる。
「好きな人とかいたの、君?」
「はは、好きな「人間」なんていませんよ。面白いことを言いますね」
笑う華村だが、目が笑っていない。浩太はその目に引き込まれそうになる自分がいることに気が付いた。
「……それ、単純に容姿の問題ではないんじゃないかな」
「え?」

 

浩太は立ち上がる。
「華村君、ちょっと動けるかな?」
「ええ、大丈夫ですが……」
「ちょっと、手合わせしようか」
浩太はグローブをはめた。

9 「無残」、そして「美麗」と

応援要請。その話を聞いた華村は巌流島と甲賀に率いられ獣道を走っていた。
甲賀さん! この先に怪物がいるって、本当ですか!」
「間違いありません。しかも群れです。既に喧騒が耳に入ってくるでしょう?」
「華村君、協力を要請したのは我々だが、無理だけはしないでくれ。若手がいなくなるのはこちらとしても痛手だ」
「分かりました」

 

たどり着いた村は既に火の手が上がり、石川の隊士が黒い怪物たちと対峙していた。
「お館様!」
隊士の一人が気づいて叫ぶ。振り向く彼らの顔には、安堵。
「来てくださったのですね!」
「お館様がいるなら百人力だ!」

 

「村の人間は無事かね?」
「大丈夫です。全員避難させました、けが人はいますが死者は出ていません!」
「よくやった、あとは我々に任せたまえ」
隊士たちがまとまって避難所まで走るのを見送り、三人は周囲を見回した。

 

「巌流島さん、これだけの数、僕たちだけでどうにかなるのですか?」
「任せたまえ。忍、華村君、この辺りまで怪物をかき集めるのだ!」
「了解!」
華村は空をなぞる。光が溢れ出し、引き寄せるとそれは、田辺から預けられた鎖鎌へと姿を変えた。忍も腰に下げていた苦無を取り出す。
「東側は任せました。南の方角に大きいのがいます。お気をつけて」
「分かりました。甲賀さんも無理はなさらず」
「優しいのね、華村君は」

 

黒い怪物は華村の姿をみるなり例外なくとびかかってくる。華村は鎖でそれをいなしながら走る。その道中で見つけたのだ、一層大きな怪物を。
怪物もこちらに気が付いた。ゆったりとした動作でこちらに向き直る。
いままでの自分なら腰を抜かしていた。けれど、負けるわけにはいかない。
「来い、化け物」
華村は挑発して走り出した。怪物の群れが、徐々に北側に集められる。

 

「巌流島さん!」
華村が声を上げた。同時に甲賀も顔を出す。巌流島は一つ頷くと、空をなぞり、一振りの太刀をつかみ取った。すぐさま柄に手をかけ、居合の構えをとる。

 

「聞け、森羅万象の意思よ。わしは「白虎の申し子」の意思を持つ者。「無残」の忌み子、ここに現れん」

 

一瞬だった。遅れてくる強い風で華村はそれに気づいたくらいだ。巌流島の姿は怪物たちの背後に跳び、刀を抜いていた。
「……我、操るは一撃必殺の剣」
血振りをし、親指の腹で太刀をなぞる。
「故に振り返りし隙を与えず、残るは音のみ」
納刀された太刀は僅かに刀身を残すのみ。華村は気が付いた。怪物の群れが、微動だにしない。
「……斬」

 

カチリ
刀が仕舞われた音が響く。瞬間、怪物は次々と悲鳴を上げ、その場に倒れていく。
「すごい……」
華村は思わずつぶやいていた。素質や才能だけでは頭角を現さない、「努力」によってなされる技。一瞬にして最大限の集中を成す巌流島だからできた、居合。

 

「! お館様!」
甲賀のその声で華村と巌流島は気づいて振り返る。
「……うそじゃろ?」
巌流島が絶句する。あの巨大な怪物が、よろよろと立ち上がっているのだ。

 

華村は感づいていた。巌流島の居合は集中力の上に成り立つ。故に、こうした緊急事態に弱いのだ。
だが、先ほどの居合を食らって殆ど体力は残っていないと見た。
「……」
ならば、僕のすべきことは一つ。集中できる時間を作ればいい。

 

華村は鎖を放つ。自在に操られたそれは怪物に襲い掛かり、体を拘束した。
「華村君!」
「……僕についてきたんだ。相手は僕だろう、怪物……」
華村の眼には、光が灯っていた。
「『僕を見ろ』!!」

怪物の動きが止まる。華村が目配せすると、巌流島は再び居合の構えを取った。

 

巌流島の刀に貫かれ地面の溶けていく怪物を見ながら、華村は正気に戻って動けなくなっていた。
「華村君……」
甲賀が肩を貸す。なんとか立ち上がり、二人に連れられてよろよろと歩く華村は僅かに笑っていた。
「華村君、君はもしかして、自分の「素質」に気づいていたのか?」
巌流島の言葉に、華村は笑いかけた。

 

「はい。僕は、そういう忌み子でしたから」

8 忌み子と人の子

昼食の時間になっても巌流島は食堂に現れなかった。甲賀に訊いてみると、彼女は困ったように笑ったのだ。
「あの人、一度調べものを始めると夢中になって時間を忘れるんです。私も後で向かいますが、よろしければ、おにぎりでも持って行ってくれませんか」
そう頼まれた華村は食堂の隊士におにぎりをお願いし、自分はお茶を淹れてトレーに乗せた。

 

「巌流島さん、入りますよ」
ノックを3回。ドアを開けると畳の匂いがふわりと舞い上がった。
青空の光が全開の窓から入り込む。部屋の壁には大量の本と古びた紙の束が並べられ、貼られ、所狭しと重ねられていた。
「巌流島さん!」
華村が後ろから呼びかけ、巌流島はようやく反応したように机に向かうのをやめた。ゆっくりと振り返り、ああ、と声を漏らす。
「華村君か。今、何時かね?」
「一時半です。ご飯に来ないから甲賀さんが心配してましたよ」
「そうか。すまないことをしたな。そのおにぎりはそこに置いてくれないか」

 

小さなちゃぶ台の上におにぎりを置くと、華村は自然と巌流島の近くに寄り添った。
「何の研究をしていたんですか?」
「忌み子の歴史だ。古来より言い伝えが続いているようだからな」
机の上には大量の紙。ノートやプリントが束になって乗っていた。
「私も忌み子だが、ついてきた忍には迷惑をかけたくないのでね」

 

「……ん?」
その言い回しに、華村は引っかかる所があった。
「その、もしかして甲賀さんは、忌み子じゃない……ん、ですか?」
「ははは、ばれてしまったか。なぁ、忍」
巌流島が言うので後ろを振り向くと、甲賀が資料をもって立っていた。
「華村さんの言う通りです。お館様は忌み子ですが、私はただついてきただけの存在です」

 

「わしと忍は同じ村の出身なんだが、わしは忌み子であるという理由で地下に監禁されておった。皆暴行を加えて行ったが、忍だけはわしと遊んでくれたんだ」
懐かしむように巌流島は視線を上げる。甲賀も微笑みをたたえて続ける。
「しかし、それがばれてしまって私は村八分に合い、村を追い出されました。お館様に二度と近づくなと。しかし、それであきらめがつくほど、私は単純ではありませんでした。村から遠く離れた集落に四神の申し子がいる。彼らは忌み子を引き取っている。その情報を掴んでいた私は寝食を忘れ助けを求めに行きました」

 

「本当に驚いたね。まさか、見捨てたと思っていた忍が、四神の申し子を連れて助けに来るなど思ってもいなかったのでな」
華村は仲良くしている二人を見ると自然と笑顔がこぼれるようになっていた。信頼し合えるパートナーというのだろうか。とにかくそういう存在にあこがれがあったのは言うまでもない。

 

「それで、忍。書庫の資料は見てきたかね」
「はい。大まかにこのあたりが」
華村は立ち上がり、二人を一度見送って戸を閉めた。

7 見えない存在と「残響」

「……え?」
その生物を見つけた斎藤と立花はぽかんとした。
目の前にいたそれは、小型の黒い猪。それ単体では650キロもあるようには見えない。
「どういうことですか、カワウチ様」
「事前情報との食い違いが見えるのですが」
「いいや、こいつはでかいはずっす。あたしの耳と勘がそう言ってるんすから!」

 

カワウチは空をなぞる。そこから空間が避け光が溢れ出し、それは巨大な槌へと姿を変えた。
「下がるっす、斎藤さん、立花さん! こいつは、あたしがやるっす!」
「了承しました」
二人が茂みに隠れたのを確認し、カワウチは目の前の猪を見据える。
後ろ足を鳴らして威嚇する猪だが、カワウチは違和感を感じていた。
「まぁ、やってみないことには分からないすから!」
正面切って蹴りだしたカワウチは、猪めがけて槌を振り上げる。しかし。
「ぐっ!?」
カワウチの身体が、横に吹き飛ばされた。

 

したたかに巨木に体を打ち付けたカワウチ。戦況を見ていた斎藤と立花は目をそらさないまま言葉をかわす。
「見ましたか、今の」
「ええ。猪はまるで動いていなかった。まるで「見えない何かに飛ばされたよう」でした」
「ま、まだまだァ……!」
よろけながら立ち上がるカワウチ。しかしそこに追い打ちをかけられるように続けざまに衝撃が走り、その身体は高く打ち上げられた。

 

「カワウチ様」
地面に落ちたカワウチに、斎藤と立花が駆け寄る。
「このままでは危険です、貴方の身が持たない」
「うるはに同意します。一度引きましょう。他の隊士を率いて再度……」
「……いいや」
槌を支えに、よろけながらカワウチは立ち上がる。
「わかったっす、こいつの「正体」」

 

カワウチはポケットから黒い帯を取り出した。
「嫌なんすけどねぇ、目隠しなんて」
そう言いながら、その黒い帯で、目を隠す。
「あの時のこと、思い出しそうで」
槌を正面に構え、カワウチは口角を上げる。
「でも、あたしはあの時の弱い忌み子じゃないっすから」

 

「聞け、森羅万象の意思よ。あたしは「玄武の申し子」の意思を持つ者。「残響」の忌み子、ここに現れん!」

 

カワウチは正面から蹴りだした。地面が震える、衝撃が走る。しかし今度はカワウチにその衝撃が加わらない。彼女がかわしているのだ。目の前すら見えてないはずなのに、彼女自身には「全て見えている」ように。

 

「隠したって無駄っすよ!」
カワウチは目の前に迫った猪には槌を振るわず、踏み台にして高く飛び上がった。
「お前は、ここだぁ!!」
横に振るわれた槌は、何もない空間にあったそれをとらえ、大きな音を立てた。
獣の咆哮。じわり。空気をなぞる様に黒い姿が現れ、その場で倒れこんだ。

 

地面にしみこみように消えていくそれを見ながら、カワウチは目隠しを外した。ふらりと倒れそうになる彼女を、斎藤と立花が支える。
「カワウチ様、お見事でした」
「へへ、当然っすよ。はぁ……お腹空いた」
「しかし、驚きでした。このような怪物にも、光の屈折を操る術を身に着けているとは。カワウチ様、よく見つけましたね」
カワウチはその言葉にぽかんとし、返した。

 

「「クッセツ」って、なんすか?」
「え?」
カワウチは照れたように笑う。
「あたし、馬鹿っすから、勉強ほとんどできなかったんすよ」
「では、なぜ先ほどの敵の正体を……」
「「音」っすよ」

 

「あたしは衝撃音で情報を読み取る力がそなわってるんす。だから、遠距離の敵の位置や重さも分かったし、攻撃から本体の形が「見えていた」んすね」
「なるほど。目隠しは音に集中するための道具と」
「そういうことっす」

 

上手く立ち上がれないカワウチに肩を貸し、斎藤と立花は歩き出した。
「今日のご飯、なんすかねぇ」
「何でもおいしく食べる方でしょう、カワウチ様は」
「よくわかったっすね、はは」

6 女の子の会話

斎藤と立花はカワウチを連れて買い物に出ていた。
「カワウチ様、お買い物につき合わせてしまい申し訳ございません」
「あたしは楽しいからいいっすよ! 女の子っすもん、お洒落とかかわいい物とか気になるはずっすから!」

 

「カワウチ様は大変活発なのですね」
「私たちとはまるで違う」
「うーん、そんなことないと思うっすよ? 確かにお二人はおとなしいっすけど、好きな物に対してなら元気になれると思うんす」
雑用を楽しむカワウチはよくあちらこちらを掃除して回る。あの豪邸の地下には大きな書庫があるのだが、ここに来てからほぼ毎日、カワウチは二人の姿をそこで見ていた。
「お二人は本を読むのが好きなんすよね?」
「本も好きです。ですが、我々はそれ以上に「知識」というものに興味があります」
「うるはに同意します。知識は持っていて損もなく、人間と違い裏切ることはありません」
「なるほど! あたし、頭が悪いんで今度勉強教えてほしいっす!」

 

「教えることなら、他にもありますよ」
斎藤はぽんとカワウチの肩に手を置いた。顔こそ笑っていなかったが、その空気感には安堵できる。
「私たちよりもカワウチ様は年頃です。一緒にお洒落しませんか」
「私たち二人ではどうにもその辺りに敏感になれないのです。カワウチ様にご教授願います」
二人の顔を見、ぽかんとしていたカワウチはとびきりの笑顔を見せた。
「……はいっす!」

 

買い物袋を抱えた三人は帰路についていた。
「……そういえば、カワウチ様は田辺様の管轄の方なのですよね」
「そうっす。私の命を救ってくれたのが田辺さんすから」
カワウチは空を仰ぐ。
「あたしの生まれ故郷では、忌み子は皆殺されていたっす。あたしも両親が必死に隠していたんすけど、長くは持たなくて。目隠しをされて連行されて、何が起こったか自分でも分からなかったっす。ただ、次に目隠しを外してくれたのが、田辺さんした。止めようとする人々を薙ぎ払って、数人の忌み子を連れて走ったっす。夢中で走ってたもんすから、故郷の場所はもう分からないし、知ろうとも思わないっすね」

 

「壮絶、だったのですね」
「そうっすね。でも、私は親に愛された。下にはたくさんの兄弟がいて、あたしが忌み子でなければ幸せな家庭っしたから」
「帰ろうとは思わないのですか」
「そんなことしたら、今度こそ殺されるっす。……まぁ、あたしが殺してしまいそうな気もするっすけどね」
カワウチが視線を落としたその時だ。

 

「……!」
カワウチは突然足を止めた。つられて斎藤と立花も足を止める。
「どうかなさいましたか、カワウチ様」
「……500メートル先、650キロの生物が移動。こちらに向かってきてるっす」
カワウチは荷物を斎藤と立花に預けた。
「いってくるっす! お二人は先に屋敷に!」
「お待ちください。私たちも向かいます」
「うるはに同意します。今は腕が立ちませんが、忌み子の「仕事」を見せてください」
「……危ないと思ったら即急に逃げるんすよ!」
二人が頷いたのを確認し、カワウチを筆頭に三人は走り出した。

5 鑑定の時間

昨日の広間に呼び出された華村、斎藤、立花の目の前には、大きな箱が置かれていた。
「昨日はどうだった、皆? ぐっすり眠れたかな?」
乙哉がニコニコと笑いながら問う。三人はバラバラに、曖昧に頷く。
「久しぶりに布団というもので寝たから、疲れも溜まってたのか、気持ちよくてつい」
「部屋も綺麗なところが割り当てられ、今のところ、十分すぎるほど満足しています」
「うるはに同意します。ありがとうございました」

 

「さて、本題に入ろうか」
田辺が箱の蓋を開ける。中には大量の武器が眠っていた。
「君たちにはこの武器の中から自分の物を一つ選ばせてもらう。本来なら俺らが勝手に決めて勝手に振り分けるものだが、長く使うものだ、肌に合わないと厳しいだろう」
「だから、お前らの意見も取り入れたいと思っている。何でもいい。気がかりなこと、持っている知識、考え、話してみな」

 

三人は顔を合わせる。暫く目線を重ね合わせていたが、やがて斎藤が口を開いた。
「……正直な話、我々、私とりかは戦闘には向いておりません。純粋な腕力も体力も殆ど持ち合わせていないのです」
「うるはに同意します。しかし、どうしてもというならば、私たちにも考えがあります」
「ふーん、聞かせてもらえるかな」
浩太が興味を向ける。
「力のないものは遠距離から。そのような知識がいかにして広まったかは分かりませんが、それは大きな間違いです。弓の一本を引くだけでもかなりの体力を使い、筋力がなければ投げた物は威力を持たない」
「ならば、私たちが使うべくは近距離の武器。刀が理想ですが、これから鍛え上げて重い物を振り回す方が正解です」

 

「なるほど。だったら、こんなのはどうだろう」
田辺は箱から大型の武器を二つ取り出した。
モーニングスターとメイス。使い方は分かるな?」
「勿論。しかし、重すぎないですか」
「安心しろ。これは振り回すごとに重心が移動する。思ったより扱いやすいはずだ」
「それならば、暫く手元に置いておきましょう。いいですね、りか」
「分かりました。もらい受けます」
田辺から武器を受け取った二人は下がる。

 

「さて、華村君はどうかな」
浩太の声に華村は顔を上げた。
「僕も、男とはいえ、戦闘にはあまり向いていません。でも、二人のような知識があるわけでもない。本当に、何に向いているかすらも分からないんです」
「ふむ。乙哉、彼の素質は?」
「素質?」
「「美麗」だね。それ単体では威力は発揮できないけど、サポートにかなり向いた素質だよ」

 

「だったら、こんなものはどうだろう」
田辺が取り出したのは、鎖鎌だ。
「殺傷力より妨害で威力を発揮する。一人で行動するのもいいが、最初のうちは誰かと行動した方がいいかもな」
「あ、ありがとうございます……」

 

「大丈夫。ここでの生活も慣れてくるから、ゆっくり頑張っていこうな」
浩太が華村の背を軽く叩く。三人は不安げな顔をしながらも頷いた。