その他小説
「みっちゃんはすごいよね。走るのも速くて、歌もうまくて、いつまでも美人で。羨ましいよ」 「でも、友達はいなかったよ」 「え?」 「その時は、皆物珍しそうなものを見るように私を見ていた。話しかけたら喜ぶけど、アイドルに……ううん、珍獣に話しかけら…
「なぁ、これ俺がやってもいいわけ?」喜島は心配そうな声を上げる。上下ジャージ姿の彼の目の前には同じく動く気満々の石川。そのわきで田辺がカメラをいじっている。「ほかに頼める相手がいなかったんだよ。女学院には申し訳ないが」「甲賀さんとか乙哉と…
信じられないものを見た。青は後にルソーにそう語ったが、ルソーの時代ではこれが当たり前になっているという。武器も何も持っていない、細い体躯で素手だけつかうのかと思いきや、突然自分の左胸に右腕を当てた、否、突き刺したのだ。ずぶずぶと沈む腕を引…
フォロワーさんから出だしをもらったので書いてみました。 微グロ注意。
甘々文字書きワードパレット「ガトーショコラ」 「溜め息」「目を伏せる」「拭う」
甘々文字書きワードパレット「パフェ」 「欲張り」「少しずつ」「瞳」
つと、流し込む紅茶の味が甘い。立ち上る湯気は窓の外に散る正反対の存在と同じ色をしている。「遠くからご苦労だったね。疲れていないかい」「奉仕対象の命令です。そこに疲れは関係ありません」俺の返事に夢岡氏は困ったように首を振った。「これではまる…
振り抜かれた細い十字架の間を潜り抜け、腕を伸ばす。だがそれより速く横から蹴りが飛んできた。ガードする余裕はあった。威力もさほどない。最初から当たらないつもりの蹴りだったのだろう。「流石、絵空」「……」回転して振り下ろされた十字架をかわし、一…
陽子さんリクエスト 「海」「地平線」「フレーム」×伊藤兄弟(伊藤浩太、伊藤乙哉)
「黒瀬英介」という言葉は一個人を指す名詞ではない 最初に存在が確認されたのは、とある屋敷に現れた怪物を倒した男だった 力を持たず、拳銃の腕だけでのし上がった刑事である 以後、様々な世界に同じ存在を観測 多少世界の誤差はあれど、皆同じ姿に同じ力…
私、不退転という者っす 有罪裁判官ナンバー2……の部下。つまりは下っ端の裁判官っす 有罪裁判官は普段は天の国にいるんすけど、私は地上の監視のため、蓮池を通した下界、つまり、人間で生活を送ってるっす 最初は大変っした 何でも頂ける天界とは違って、自…
「あれ、そこの人」 不意にそう声をかけられた気がして、ハシモトは振り向いた アイラには及ばないが、大柄な男がそこに立っていた 「やっぱり、ハシモトじゃねぇか。久しぶり」 「『首割り』か」 「お前、確か遠くに越したんじゃなかったか?」 「最近、ま…
「ふう、買った買った」 息を漏らしながら男、神宮結は言う 安売りの店を梯子し、ようやく今日の夕飯の材料を買いそろえたところである 「うん?」 不意に声が聞こえた気がして、結は振り返った 「あ、気づかれてもうたわ」 そう言いながら女性が近づく 女性…
「ふぁ……」 空に欠伸一つ、管崎嘉平は喫茶店の一角でうつらうつらとしていた 放浪を始めて早数年と数日。気ままな一人旅は寄り道の連続である そこに 「Hey」 そう声をかけられて嘉平は顔を上げた 「Ah,can you speak English? I have a talk with you.…
僕たちはいつも二人で一つだった 小さいころから、食べるもの、遊ぶおもちゃ、着る服、正確な時間でさえ一緒だった だから僕は彼が好きだったし、彼も僕を慕ってくれた 「そーら、僕らの勝ちだ」 チェスの駒を同時に弾き、僕たちは言った 「流石は参謀。私ど…
血しぶきがまた舞った それを見て彼は口笛を吹く 「やるねぇ、お嬢さん。そんなドレス着ておいてここまで戦えるなんてよぉ」 女の姿は白いドレス。もっとも、裾は血にまみれて真っ赤であるが 対する男の姿はタキシード これは戦い。互いの顔は仮面に阻まれて…
いつもの道。いつもの人混み 電車、道路、ビル 欠伸をひとつして横断歩道の前に止まる 変わったばかりの信号には俺一人しか並んでいなかった まったくもって生きづらい世の中だ 何をしても間違い、間違い、間違い もう何が正しいのか分からない 右向け右の人…
「流石にこの季節ともなると寒いな」 ナツミが呟く。赤くなった指先に息を吹きかけてこする 「そりゃあ、真冬だもの」 シンが笑いながら返した ここ数日、白い雲が空を覆ってすっきりしない日が続いていた 雪でも降ればいいのにとも思ったが、まだその時期で…
「おや」 不意にそう呟いて、上官は足を止めた つられて止まる私は、上官の視線をたどって上を向いた 「もう紅葉の季節なんだね」 「空が青いもとで紅葉を眺めるのは久しぶりだ」 私は頷く 風に揺られる紅葉と背景の青い空が見事にきれいなコントラストを描…
祭りは嫌いだ 溢れかえる人。喚き声。混ざりに混ざる匂い そして、打ち上げ花火 「今年もミカガミ祭りの季節かぁ」 掲示板のポスターを見ながらフブキは呟く ルソーもつられてそちらを見ると、派手なポスターが目に入ってきた また騒がしい日が来るのかと思…
しとしとと雨の降る午後 屋敷の窓から外を眺めながらルベルトは左足をさすっていた 「ったく、嫌になるぜ。低気圧が続いて痛みが止まらねぇ」 「ルベルト様、お呼びでしょうか」 そこにそう問いながら、彼の友人であるレンブラントが入ってきた 「悪いな、レ…
「それじゃあ、また明日」 誰に言うわけでもなくその言葉を投げかけ、片桐唯人は教室を出た 高校に入って2度目の春だが、友達がいないのは寂しかった 「よう、唯人」 不意に片桐は呼び止められ、振り返る 校門に寄りかかり、一人の男子が手を振っていた 「…
こつこつと部屋の中に踏み入る女 部屋はそこそこの広さがあり、暴れるにはちょうどいい広さであった すっと、女は右手を上げる 瞬間、バチっという電撃音と共に部屋のいたるところから的が出てきた 女はいつの間にか握っていた拳銃で、的確に的を射抜いてい…
「ししっ、あいつ、あのガキを狙ってるようだぜ」 茂みの中で声が聞こえた そこから少し離れたところに、一匹の狼がいた 狼の視線の先には、道を歩く少女がいた 「偏屈なあいつのことだ。どうせ妙な作戦でも練ってるんだろ」 茂みの中には、狼が三匹 少女を…
カチャカチャと音がする えんぴつ党の部室の端のほうで、一人の少女が何かをいじっていた 「やぁ、諸君! ……って、まだ誰も来ていないのか」 その部屋の扉を開け、西園寺は言った 「皆さん、まだホームルームが終わってないそうなので」 部屋の端で作業をし…
えんぴつ党副党首・佐々木シンは過去、かなり荒れていたという えんぴつ党に入るまで彼はまともに勉強もせず、暴力に明け暮れていた 彼は「勉強」や「Qモンスターの討伐」に自分の価値を見出せなかった 西園寺に出会うまでは 「こんなところにいたんですか、…
「進め! この場所を落とすんだ!」 鋭い声が響く。火柱が上がる 僕はその合間を縫って、先へ、先へと進んでいた 先にもう既に先輩たちが行ってる 壊滅状態となった建物の中に、もう生きている命はいくつになっただろう これしか手がなかった、とは、僕は言…
「大黒屋さん」 日がすっかり落ちたというのに、彼は明かりもつけず、空を見るのを止めなかった 空に何の意味があるんだろう。何度も問いたくなったけど、僕は黙ってみてることしかできなかった 「皆、もう出ていきますよ」 今夜は革命の日。あの日の後そう…
「要するにさ、私らの世代が「なかったこと」になれば安寧だって、政府は思ってるんだよね」 シフォンケーキをむしゃむしゃと頬張りながらチームメイトは言う 自分たちの過ちをなかったことにしたい。その気持ちはわかる けど、その「過ち」はあまりにも大き…
「非公式学力向上団体 えんぴつ党」 西園寺ナツミを中心とする小規模のサークル 「学力の向上」と「鉛筆の推奨」に力を入れる理念のもとに活動を行っている 主な活動は生徒会活動や委員会活動の補助 しかし、大概時間があいているので全員でQモンスターの討…