バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

スーツ武器オフ会

【スーツ武器オフ会】「強さ」の先に【タイローン編】

ぐしゃぐしゃの赤髪、色の落ちた鋭い歯、変色した指の先 それでもここに来るノイジー兄さんは微笑みながら言ってくれた 「そんな君も大好きだよ」 元来兄弟が大好きだったノイジー兄さんから出る偽りのない言葉 それでも、俺には苦しかった ガスマスクと手袋…

【スーツ武器オフ会】欲無き男の唯一の願い【タイローン編】

サイレンの音が響く 俺の大嫌いな、頭に響く音 刑務官の走る音を聞きながら、俺は壁に背を預けていたガシャン 不意に違う耳障りな音 目を開けると、檻の中に鉄格子の扉が捨て置かれていた「ねぇ、元気にしてる?」 無邪気を装った邪険の塊 その姿は.......動…

【スーツ武器オフ会】面会【タイローン編】

「タイローン」 優しい声が聞こえた気がしてまどろみから覚めると、檻越しによく知った顔がいた。 俺と同じ顔、同じ目、同じ髪。なのに、何もかもが俺と違う、俺の「兄貴」。 「起こしちゃったね。ごめん」 ノイジー兄さんは申し訳なさそうに俺を見て言った…

【スーツ武器オフ会】怪物の告白【ノイジー編】

ここはどこだろう。何も見えない。何も聞こえない。ただ、とても心地がいい。ふわふわと宙に浮いたそんな感覚。 ふと上を見上げると、よく見知った姿がそこにあった。二振の刀を握りこちらを見下ろす「怪物」……、もう一人のノイジー・ノーティス。元来こいつ…

【スーツ武器オフ会】整備室の緊張【ノイジー編】

自分の背後の「怪物」は、音を食らって、ノイジー自身も食らって、目まぐるしい速さで成長していく。早くこの呪いから解放されたいと何度願ったか。そして、それは呪いではないということに何度絶望したか。無音の場所を。せめて、静かに流れる時の音が聞こ…

【スーツ武器オフ会】彼の過去【ノイジー編】

きしり。骨のかみ合わない関節の音。足を引きずる様に、ノイジーは歩いていた。ヘッドホンで阻害していたはずの音が、日に日に大きく、多くなってきている。助けてください。そう叫びたくても、この力の存在は殆ど知られていないし、知られたくない。 彼は気…

「音」を食らう怪物【ノイジー編】

俺はとある国のスパイ。 今回の任務はこの国、ウィーゴ共和国の大統領と接触し、弱点を探すことだ。 予め手に入れていた情報をもとに完璧な変装をとげ、諜報機関への潜入に成功。 このままうまくいくだろう。そう思ってた。 「……あら?」 後ろから男の声。こ…

「凄惨」の眼をもつ者【ディクライアン過去編・5】

あの町も。 あの町も、あの町も、あの町も。 最後には血だらけになって無くなってしまう。 俺にはそれが見えるようになっていた。 「洗脳」の能力を手放した代わりに「未来視」の能力を手に入れたのだ。 ただし、そんなに気持ちのいいものではない。 俺の眼…

「洗脳」から「凄惨」まで【ディクライアン過去編・4】

何時だったかは覚えてない。思い出したくもなくて忘れている。 いつものように手に入れた物資を分けている時だった。 「タイローン……?」 末の弟であるタイローンの様子がおかしいことに気が付いた。 あの時のノイジーのように、縮こまってこちらを見ようと…

「洗脳」の眼を持つ少年【ディクライアン過去編・3】

家を失った俺たち三人は、路上生活を始めた。 不思議なことに、食うのには困らなかった。食べ物を乞えば、いつも多少分けてもらえていたからだ。 貰ったわずかな物資は、弟に先に分け与えた。それが兄としての義務だと思っていた。 しかし、そんな環境にも徐…

普通じゃなくなった日【ディクライアン過去編・2】

ディクライアン・ノーティス。 生まれはイギリス、育ちはウィーゴ。彼としては生粋のウィーゴの人間だ。 下に弟を二人もつ五人家族の長男。真面目で実直な性格が好感を呼んでいた。 しかし、その幸せも長くは続かなかった。 何者がやったかは分からない。 た…

ぐしゃぐしゃの視界【ディクライアン過去編・1】

すっと目を閉じると思い出す、二つの顔と赤い世界。 一人は泣き、一人は放心し、俺のことを見ていた。 俺は知っていた。 その悲痛な叫びをたたえる顔が、闇に呑まれていく弟たちであると。 「白井ー」 資料の束を抱えてKOGAの事務所を訪れていたディクライア…

オイルの匂いとティータイム【ノイジー編】

「失礼します」 恐る恐るドアを開けてノイジーが入った場所は、技術部の作業場。ノイジーは片手にお盆を抱えて、もう片方の手で器用にドアを閉める。 「技術部の皆さん、お疲れ様です。清掃隊にお茶菓子の差し入れがあったのでおすそ分けにきました。」 「あ…

盲目を騙る拳銃使い【ディクライアン編】

ディクライアン・ノーティス。彼の特徴を述べるとするならば、赤い髪に両利きの拳銃使い。そして何よりも、その目を覆う黒い目隠し。 彼はこれを外したがらない。大切にしている弟の前でさえ、仕事の時は目隠しを付けたままだった。 射撃練習場に来た松雪は…

任務デート【ノイジー編】

「任務デートです、ノイジーさん」 そう言ってきた西名の様子がいつもよりおかしいことにノイジーは「音」で感づいていた 見れば、白い肌は更に青白く、頬はこけ、目の下にはクマ 普段なら純粋な好奇心でキラキラしている目は白目にぽっかりと穴が空いたよう…

正義とは【ディクライアン編】

「失礼するぜ、九のばあさん」 それだけ言ってディクライアンはNOGIの医務室に入ってきた 「なんか用かいな、ディック」 「いや、ベッド借りに来た」 ディクライアンはそれだけ言うと、「無粋やわぁ」という九の声を聞かずに奥のベッドに転がった 「それで、…

仲がいいのか悪いのか【ノイジー編】

人々が往来するKOGA基地内 その中を縮こまりながら歩く一人の青年がいた 彼の名はノイジー・ノーティス 戦闘狂で名をはせるNOGIの歩兵師団員ディクライアンの弟である 「あーっ! ノイジーさん!」 後ろから不意に声をかけられてノイジーは飛び上がった 「あ…

正義の正解【ディクライアン編】

いじめっ子こそ世に憚る時代 かつてのいじめっ子は更生を褒められ順当な道を歩んでいく いじめられっ子は殻に閉じこもり、いつまでも外に出られない ディクライアンは、そんな世界を疑問視していた 「お前にとっての「正義」とは?」 会う人会う人にその疑問…