バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

セカヒト番外 タナトス編

行方不明の仲間

「……はぁ」 デバイスを見ながら信行はため息を吐いた 「どうした、信行」 秀忠がホットミルクをもって横に座った。目の前のテーブルに信行の分が置かれる 「まだ見つからないな、と思って」 「家愛の事か」 「うん。急いだところでどうにもならないけど、失…

ツキトの災難

大黒屋の研究所はやや山間の奥まったところにある 通い助手であるツキトはこの山を登らねばならないのだが、ルイウに襲われたり道に迷ったりと、この山にいい思い出がない 僅かに髪を手でかき回しながら、ツキトは山を登る 「……あれ?」 ツキトは顔を上げて…

とある死神の独白

おや、僕に持ってきてくれたのかい? 独り身に見えた? 残念、今は仲間待ちさ でも、折角だからその林檎、頂くとするよ 君はここに来てどのくらい経つ? ……へぇ、まだ来たばかりか だったら、一つだけ僕が教えてあげよう 君、仲間は大切にしなさい 時にむか…

三人目の仲間

ピピピと電子ウィンドウを開き、大黒屋は幾つものデータを見比べる 通い助手のツキトが部屋に入ると、いつもはいない、しかし見知った顔の二人が同じ部屋に居ることに気がついた 「信行さん、秀忠さん」 「よっ」 「お邪魔してるよ。お茶は気にしないで」 「…

彼らの仕事

羽ばたく音が聴こえる 大柄な蝙蝠のルイウの群れが、住宅街を羽ばたき、獲物を探す 前方に人間を発見。やや小柄な男性 ルイウが襲いかかろうとしたその時 『蝙蝠型ルイウ【3】、討伐を開始します』 無機質なアナウンスの後、最後尾からぐちゃりと大きな音が…

関門海峡より

関門海峡。福岡エリアと山口エリアをつなぐ大きな橋の上に彼らはいた 夕刻の太陽が海に沈み行く。青い海が一度黒を纏ってオレンジに染め上げられる 信行はそれを眺めながら、秀忠はそれに背を向けるようにして橋げたに体を預けていた。 「秀忠は見ないの、夕…