バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

12 読書好きの知識欲

乙哉は部屋を巡って隊士たちに挨拶をかわす

堅苦しいのは苦手ではないが、どうせ付き合うなら明るくいきたいとは乙哉の言うところである

「……ん? アケミちゃん?」

乙哉は部屋の前でうろうろしているカワウチを見つけた。カワウチもこちらに気づいて寄って来る。

 

「乙哉さん、斎藤さんと立花さんがまだ帰ってこなくって」

視線をあげると、確かにそこは斎藤と立花の部屋だ

「あてはあるかい、アケミちゃん」

「今日は外に出ていないはずっす。あてがあると言えば、ひとつ」

 

カワウチの進言により地下の書物庫に足を踏み入れる乙哉

僅かに灯る明かりだけを頼りに、埃っぽい道を進む

「毎日掃除をしていても、結構埃がたまるものだね……。広い書物庫だなぁ」

この屋敷を石川が借り入れた時点で、地下の書物庫には相当量の書物があった。それが利用していくうちにさらに増えた次第である

 

やがてその姿を見つけた乙哉は手を振った

「斎藤さん、立花さん」

斎藤と立花は本から目を離し、乙哉を見た

「乙哉様。現在、何時ですか」

「もうすぐ夕食だよ」

「ありがとうございます。いきましょう、りか」

「承知いたしました」

 

「ねぇ、斎藤さんと立花さんって、いつも二人で一つだよね」

廊下を歩きながら乙哉は笑いかける。斎藤と立花は表情を変えないまま答える

「かつての街は学習機構に優れていたため、頭のいい方々が自然と集まります。そのうちの一つで、私とりかは出会いました」

「後に私たちはふたりとも忌み子であると知り意気投合。常に二人で行動するようになります」

「ですが、街の人間にばれて、いけにえと銘打って街を追い出された次第です」

「まさか、また勉強ができるとは思いませんでした」

 

乙哉は思い出す、二人の「暗示」を。

「勉強が好きなのは、必然だったかもしれないね」

「あの書庫の知識を、全て自分のものにできればいいのですが」

「うるはに同意します」

「恐ろしいことを言うなぁ」

乙哉は苦笑した

そして決めた。彼女たちのためにも、どんどん勉強させてあげようと