バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

30 校則は守りましょう

「やぁ、水城君、千鳥君」
「陣内!?」
久しぶりの朝霧の登場に驚く二人。暁から仲間になると説明があると更に驚いた。

 

「どういう風の吹き回しだ?」
「なぁに、単純なことさ、この裏にはびこる野望に抗う小さな力に、知恵を貸し与えたいだけなのだ」
嘘だな。暁には聞こえていた。
朝霧が向けている感情は「好奇心」。大方、裏で行われているらしい野望にどう抗うかを高みの見物したいだけなのだろう。
「陣内、分かってるだろうな」
念のために釘を刺すと、朝霧はこちらにいたずらっぽい笑みを見せた。
「勿論だとも。私は嘘はつかない」

 

「水城雲外!」
廊下を歩いてると、そんな声が響いた。先頭にいた雲外の肩が跳ね上がる。
「貴様、いい加減制服の乱れをなおさんか!」
「うげぇ、水巻じゃねぇか!」

 

水巻五月雨。暁もよく知る堅物だ。風紀委員次期委員長であり、校則を破るものを頑として許さない。
五月雨は暁、虚空、朝霧と順番に顔を見やった。そして、ため息を一つ。
「これだけいるにも関わらず半数が校則違反とは、嘆かわしいとは思わんのか」
「四人しかいねぇだろ」
「黙れ、水城雲外。貴様は論外だ」
「なっ!」

 

「陣内朝霧。久しぶりに来たと思ったが貴様、勉学の方は進んでいるんだろうな?」
「凡人の君に言われたくないね。天才の私は頭(ココ)の造りが違うのだよ」
「ならば普通のネクタイを付けて行くのは止めろ。女子はリボンと校則で決まっている」
「忘れていた。凡人より頭が固かったな、君」
今にも火花が飛び散りそうな二人を見ながら、虚空は暁の陰に隠れる。

 

「水城雲外。いい加減その態度を改めたまえ」
「……やだね。スカート履いているだけ褒めるべきところじゃねぇのか、そこは」
五月雨は大きく息を吐き、すれ違うように立ち去った。
目線は明らかに、暁のヘッドホンを見ていた。