バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

31 風紀委員の憂鬱

人は規律なしでは生きていけない。
五月雨の持論だ。しかし、人は自分を守るはずの規律に背きたがる。
「……」
休憩室に立ち寄り、エナジードリンクを喉に流し込む。刺激が口を通って喉を襲うが、胃に落ちたそれにもはや反抗思想はない。

 

先ほど出会った生徒を思い出す。
水城雲外。もう幾度となく注意したにも関わらずスカートの下にジャージを穿くのをやめない。言葉遣いも悪く、従う気は皆無。
陣内朝霧。登校免除だか知らないが校内ではたまにしか見かけない。やはり口が悪く、高圧的な態度をとる。
そして、遠賀川暁。正式に許可は得ているが、あの耳当てを音楽用と勘違いした生徒がヘッドホンをつけだす始末。

 

気に入らない。彼は缶をゴミ箱に捨てると休憩室を出た。
もうすぐ部活の時間である。そして、五月雨にとっては体を鍛える時間であり、規律を徹底して守らせる時間でもあった。

 

正義こそ正しく執行されるべきなのだ。
悪はいらない。罪はいらない。甘えはいらない。
それが、すがるべき自分の信念になっていた。

 

彼の周りには、不穏な凶器が回っていた。