バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

80 対峙

幾度も襲い掛かる警備員を斬り捨てながら、ルソーは上へ上へと昇っていた
この先に、憎き復讐相手が待っているというだけで、心の暴走を抑えきれそうになかった
「……「キョウキ」」
不意に、頭によぎる言葉
それはルソーの「心器」の暗示
彼はそれを振りはらい、再び上を見据えた

目指す場所までたどり着くのにそう時間は必要なかった
最上階の大きなドアを蹴破り、ルソーは部屋に飛び込む
中に他の人間の気配はなかった。ただ一人、正面で机に脚をのせて座っている人物を除けば

「……ふふ、本当に来てしまうとはな」
その人物は笑う
ルソーは肩を上下させながら包丁を握りしめる
カルミアグループ現当主、あなたにはここで終わっていただきます」
その言葉に、当主はのけぞって笑った
「「終わっていただきます」ねぇ。そりゃ、自分が終わるの間違いなんじゃねぇの?」

当主は立ち上がり、左胸に右腕を押し込む
ずるりという音とともに現れたのは、大ぶりの剣だった
「はなからお前のことは気に入らなかったんだよ。何が『赤髪の殺人鬼』だよ。ばっかじゃねぇの」
その大ぶりの剣の一振りで、それまでそこにしっかりと佇んでた机が吹き飛んだ

「後悔して死ね」
「こちらの台詞です」
ルソーは当主をにらみつけ、下手に包丁を構えたまま蹴りだした