バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

1 しとど降る雨の中

「……おや」

その日、宮沢地区出身の青い目の男、ゴーシュ・イヴァンは道に落ちたものを見つけた。

季節外れの夕立のように強く叩きつける雨の中、それはもぞもぞと動き、こちらを見上げた。

「……」

その目に映るのは、恐怖だろうか。

 

「こんなに大きい猫は初めて見るなぁ」

ゴーシュは独り言のように呟き、猫に寄り添う。

「君、私が分かるかい」

そう声をかけると、猫はゴーシュの眼をじっと見つめた。

「骨格もほぼ人間の者だし、言葉もわかるか……」

 

ゴーシュは考えた。

このままこの猫を連れて帰れば厄介なことになるのは目に見えていたからだ。

しかし、かの猫はじっとこちらを見て言った。

「たすけて、くれ」

ゴーシュはやれやれと首を振り、自分が濡れるのもかまわずびしょ濡れの猫に肩を貸して歩き出した。