バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

セカヒト番外 その他

網走監獄の一戦

ここは地の果てにある冬の監獄、それは、下手をすれば獄中に死ぬ恐れがあったのは、今はムカシの話。 だが、その寒さ自体は今もムカシも変わりはしないのだ。 襲い掛かる爪を防御し盾を突き出してぬいぐるみを弾き飛ばした後「どうだ、梨沢」と、振り向きざ…

記憶障害にご注意ください

「……ここが、最初に目を覚ました場所です」 ツキトは振り返りながらそう言った。 森の奥、ある程度整備された木々と草が生い茂り、更には雪道を歩く中にその建物があった。このエリアとしては珍しく瓦屋根の赤い煉瓦で出来た小さな建物と、その横にも似たよ…

北海道エリアの人間

ワープゾーンで北海道エリアに飛んだ大黒屋、ツキト、梨沢、着いて早々に「さみぃな、ここ……」と梨沢がぼやく。 季節は冬、何処を見ても雪が積もり、遠くに見える海岸線には流氷が辺りの海を閉ざす北の地にある、かつての監獄に三人が来たのには理由がある。…

医者の真似事

数日間隔でこの山奥にある研究所に行くのも、ツキトは慣れてきていた 口は悪いが実績のある科学者・大黒屋は自分には猫をかぶらずに接してくれる 何だかそれが嬉しかった 「おはようございます」 そう言って研究所に入ると、応接間に見たことのある金髪が見…

壊れた日常

ガロンとの生活は充実していた 彼の属性は回復属性 故に身体を張って対象を護ることが多く、前の自警団では皆をひやひやさせていたらしい 俺は沢山の本を読み、「闇華」を追い出そうと努力していた しかし髪は黒くなる一方で、効果を成さなかった ある夜のこ…

新たな出会いとタイムリミット

「……!」 がばりと起き上がる ここは何処だ? 真っ白な個室のようだ。申し訳程度のベッドと机、ちいさな椅子が置かれている 俺はどうやらこのベッドに寝かされていたらしい 何故こんな所にいる? 確か、妙な靄に身体を奪われて、気を失ったはずである 思考を…

某月某日、某所にて

セカイに来て間もない頃 幾度かルイウに襲われては助けてもらいながら生き延びてきた その頃の私に属性はなかった いや、あったかもしれないが、一体何のことかさっぱり分からなかったのである 武器もはっきりしなかった。助けてくれたプレイヤーが分け与え…

茶菓子と話

時計の針は三時を少し過ぎていた 下からのチャイムに気が付き、大黒屋はブラウザを開く 「あら、スイ」 「茶菓子持ってきたんだ。入れてくれるか」 応接間に通されたスイは辺りを見回す 「相変わらず殺風景だな」 「研究室に基本的に籠ってるからね。必要な…

小さな変化、大きな変化

「なぁ、大黒屋」 チームのメンバーで集まっているときに、スイが何気なく話しかけてきた 「お前、眼の色変わった?」 「眼?」 俺は端末を立ち上げてカメラ機能で顔を撮す 「昔は茶色っぽかった気がするんだが」 そう言われる俺の眼は、濃い紫に染まってい…