バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

62 作戦会議

「あーあ。ついに来ちまったか」
いつものように裏事務所で椅子にもたれかかるハシモト
上着は先ほどルソーに回収されて壁にかけられている
ルソーは存外焦らずにいつものペースを貫くハシモトを、いつものように見ていた

「いつかくるとは思ってたけどよ、タイミング悪すぎだよな。考えろっての、コマチとかいう事件記者」
「こっちの事情なんて、事件は考えてくれませんよ」
そう言ってコーヒーを口に含むルソー。やはり苦い液体だ。そう思う

「ただ、今回は僕がそんなに動けないのが痛い所ですね」
「それな。ついでに今回はあのデカブツも動けない」
ルソー自身がいつもの調子であればいくらか方法は考え付いたかもしれないのであるが、まだ病み上がりで安静にしていろと釘をさされているのだ
下手に暴れれば、再び病院送りにされるのは目に見えていた
ついでにいえばハシモトの言う通り、いつもどこかでファインプレーを見せていたアイラも動けないのである

「もう一つ心配事をあげると、彼女、かなり強いですししつこいですよ」
「お前が言うならよっぽどだな。武勇伝とかあるのかよ」
「ひったくり犯を蹴り倒したとお聞きしました」
ルソーの言葉にハシモトは若干引く
「事件記者の根性にそんな能力あわせもつって、どんな人間だよ。一度会ってみたくなるじゃねェか」
「やめておいた方がいいですよ」
ルソーはため息まじりにそう言った

「兎に角、なんとかして疑惑を払っておきたいところなのですが、一日密着となると貴方とも連絡がとれませんね」
「だからこうして今、作戦会議をしてるんだろうが」
ハシモトはそう言ってタバコに火をつけた
「今お前にいなくなられると困るのは俺やフブキだけじゃねェんだからな」

「……仕方ありません。今回は草香さんやヤヨイさんにも協力を仰ぎましょう」
「お、何か思いついたのか?」
ハシモトの問いかけにルソーは頷く
「少々手荒ではありますが、無理やり「僕」と「『赤髪の殺人鬼』」を引き離そうと思います」
「ほー……」
ハシモトはそう言って肘をついた
「教えてもらおうじゃねェの。今度はお前、何をやらかす気だ?」