バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

28 そして

「いやぁ、お手柄でしたね! 指名手配犯を捕まえてしまうなんてすごいですよ!」
白がニコニコと笑いながら話しかける
雷堂もそれににっこりと返した
「お褒めの言葉、恐縮だね。私たちは当たり前のことをしただけさ」

「ていうか、今日は似長は一緒じゃないんだな」
雷堂を見ながら八雲は呟いた
「ええ。いつも通り公園のベンチにでも座ってるかと」
「えー、これから感謝状とか渡さなきゃいけないの知ってるくせに! ちょっとつれてくる!」
白はたっと警察署を駆け出ていった

「おい、白……」
それを追おうとする八雲の肩を、ぽんと叩いて雷堂も出ていこうとする
「ちょっと、雷堂さんまで!」
「私たちは『執行人』として当たり前のことをしただけだ。故に、感謝も謝辞もいらない。そう、伝えておいてくれないかな」
雷堂は笑ったままそう言い、歩き出した



「……あ、この間のお兄さん」
とある青年は件の公園で件の赤い髪の男を見かけた
ここ数日、よく見かけるなと思った矢先のことだった
男は青年の存在をみとめ、片手を上げる
「よう、青年」

「何してるんですか、こんなところで、こんな時間に」
「暇つぶし」
男はにっと笑って立ち上がった

「なぁ、青年。世の中生きているのはつらいか?」
「え? まぁ、つらいこともあるけど、楽しいこともあるし」
「それでいい。一度きりの人生、楽しめよ」
男……、似長は笑い、その場を後にした