バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

27 「魂」

「あらあら、こんなところまで来てくれたのね、私のために」
女性はくつくつと笑う
似長は拳銃を取り出し、一歩前に出て構えた
「指名手配犯・赤坂和歌子! お前を、逮捕する!」
「……やってみれば?」

和歌子は素早く手を突き下ろして叫んだ
「『落ちろ』!」
瞬間、似長たち一行の足場が崩れ、全員が一階下に転落した
「!」
「っ……!」
瓦礫にまみれ、砂埃が舞う
しかし、似長は立ち上がり、周りの瓦礫を蹴り飛ばした

「しぶといわね。『落ちろ』!」
再び足場が崩れ、似長は落とされる
「『落ちろ』、『落ちろ』、『落ちろ』!」
何度となくその力を受け、似長は一番下まで落とされる

「……『壊れろ』」
雷堂が呟いた
あたりにまみれていた瓦礫が粉砕され、砂埃から手が生える
似長はなおも立ち上がった
丈夫な体をもってしてもダメージが残る攻撃に耐えきったのだ

「あんたの力は、所詮借り物。確かに何度も使えるが「魂」がこもっちゃいない」
似長はきっと和歌子を睨んだ
「『飛べ』!」
夢宙の声により風が巻き起こる
ふわり。似長の体は持ち上げられ、上空高くに放り上げられた

「っ…! 落ち……」
「『止まれ』!」
次いで清光の声。和歌子の動きが止まった
一瞬ひるむ和歌子に、似長は叫んだ
「「命の価値」を知らない奴に、天罰を!」

「『逝け』!!」

巻き起こる風は、一帯を包み込んだ