バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

19 朝

暗く、暗く沈む
自分がどこにいるかもわからなくなるほど、暗く沈む
「――、――」
どこかから声が聞こえる
ああ、違う。これはどこかからなどではなく……

「朝です、いい加減起きてください」
頭を思い切り殴られ、ようやく兼森は目を覚ました
頭を押さえながら見ると、エプロン姿のスイがフライパンを持って立っていた
「スイさん……、今、それで殴った……?」
「? 朝方起きない人間はフライパンで叩けと漫画で読みましたが」
漫画と現実は違うんだよと、兼森はそれすらも口に出すのをためらわれた



「人形撲滅隊は、いらない人間が集う最後の場所だ」
隊長は第4部隊を集めてそう語った
「つまり、俺たちは時を動かした段階で、お払い箱だったってこと……?」
「端的に言えばそうなるね。それは君たちも、僕もそうだ」

「でも、まだ軍部を追われると決まったわけではない。交渉次第では残ることもできる」
隊長は全員を見回して言った
「この中で、これ以上軍部に関わりたくないものはいるかな」

「……そう、皆、いい目をしてるよ」
隊長は微笑みながらそう言った



あれから鹿目、および「絶対時計」を止めた人々は捕らえられた
そして、その場に残った人形は、教育を施しながら世の中のために動かすことに決まった
人形は分担し、軍隊が一人につき一、二体所持することにきまった
そう、今の兼森のように

「おや、ようやく起きてきましたか、兼森さん」
リビングに行くとハロが皿を並べながらこちらを見ていた
「我々は食事が必要ないですが、こうしてあなたのために鍋を振るっているんですよ。早く食べてください、冷めてしまいます」
「悪い。いただきます」

三年前、光を受け付けなかった東側の窓から、さんさんと光が降り注ぐ
ようやく戻ってきた日常に安堵し、兼森はパンをかじった