バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

1 いつもの夜

「何故あなたが襲われているかなんて、実際どうでもいいことなんです」
いつもの口上が月夜に消える
今、彼の目の前にいる男は、『赤髪の殺人鬼』と称された男
帽子からはみ出る赤い髪を見ながら、彼はぼんやりとカメラをいじっていた
「ただ、貴方には、運がなかった」

「終わったか?」
彼は立ち上がりながら問う
『赤髪の殺人鬼』も立ち上がり、振り返った
「ええ。あとは証拠をとっておしまいです」
「仕事が早くて助かるぜ」

「……あの」
後ろに下がった『赤髪の殺人鬼』は、前に出て写真をとる男に声をかけた
「あ? 何だ、遠慮せずに言ってみろ」
「僕は仕方ないとして、貴方はいい加減この世界から足を洗うつもりはないんですか」

男の手が止まる
「……馬鹿いってんじゃねェよ」
男はカメラをおろすと、ゆるりとこちらを振り向いた
「俺なんざお前よりも若い時に、長い時間この「業界」に足つっこんでるんだ。今更そんな願い、叶わねェよ」

「帰ろうぜ、『弁護士』。そんなくだらない話なら、帰ってでもしてやるよ」
男は歩き出す
『弁護士』と呼ばれた赤い髪の男もついていく
「いつも通りですね、貴方は」

『ハシモト』
男は、そう呼ばれていた