バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

2 押し付けられた教育

「ただいま」
イマイに連れられ路地裏の建物の一室に通された彼。
そこには背の高い男と同じくらいの女がいた

「お帰り。イマイ、その子は誰?」
「拾った」
イマイはそのまま奥の台所に一度引っ込む

「おい、お前、何ていうんだ?」
背の高い男が声をかける
彼は既にイマイから新しい「名前」を貰っていた
「『信行』といいます」
「ふーん」

「紅茶、いれてきた」
そう言いながらトレーにカップを乗せてきたイマイは、テーブルにカップを並べていく
「信行も飲みなよ。今日から僕らの仲間なんだし」
「は、はい」
言われるがままに紅茶を口に含む信行

「仲間……ってことは、貴方もイマイからスカウトされたのね」
女が言う。信行が曖昧に頷くと、女は信行の手を取った
「あたし、『家愛』。そっちの背の高いのは『秀忠』。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」

「そいつの教育、君たちに任せるよ」
イマイはあっけらかんと言う。秀忠が反応した
「おいおい、冗談だろ! 身なりからしてまだガキじゃねぇか」
「素質はあるよ。僕が見たんだから、間違いない」
それはそうだけど、と秀忠はたじろぐ

「それとも」
イマイはぽっかりと空いた闇のような目を秀忠に向けた
「ガキのお守りはできないとでもいいたいの?」
「……ちっ」

「大丈夫。すぐになじむから」
イマイはカップを置くと、部屋の奥に設置されたパソコンに向かって作業を始めた
「……さて、どうするよ」
「教育ってことは、「あれ」しかないわよね」

「よく聞け、信行」
秀忠が言った
「俺たちはお前に、「殺しの」教育をする。俺たちは殺しのプロ、殺人鬼だ」