バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

文章特訓SS タグ編「ガトーショコラ」

甘々文字書きワードパレット「ガトーショコラ」

「溜め息」「目を伏せる」「拭う」

 

ぐっと口の端を拭う。
「行儀が悪いんじゃない?」
知ったことか。嫌なしがらみなんかに絡まったお前の顔なぞ見たくはない。
 右向け右。手を上げて渡りましょう。赤信号は止まって。そんなルールと共にフォークとナイフの使い方も、化粧の仕方も、男女の円滑な関係も教えてくれればよかったのに。貴様らが引いたレールを歩いていたら、突然突き落とされたのだ。溜め息すら出ない。

 

「ありのままでいなさい」
そんなウソ、もう通用しない。好きなことを貫いたあいつは屋上から飛び降りた。夢を貫いたあの子は、暗い部屋から出てこない。矯正施設の私に、ありのままなんて言葉はない。
手を叩く音が聞こえる。うるさい。目を伏せる。皿にひとかけらだけ残った茶色の塊を残して立ち上がる。拍手が止む。
「残してはいけませんよ」
私はぎっとカメラを睨んでいった。
「残す方が礼儀だと、教わったので」