バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

セカヒト4番外編 一週間後の景色

中央に行く先輩を見送って一週間が経った
いつもの研究所から見る空は真っ白で、空虚な心を表しているようだった
昼の時間になり屋上に上ると、冷たい風が頬を撫でた
今日ここに来たのには、一つの理由があった
こんこんと、頭を軽く叩く

「おい、起きてるか?」
『……んぁ?』
そう、「闇華」と話をするために


『お前もさぁ、いい加減その依存やめろよ』
オムレツがおいしい
『おい、聞いてんのか。呼び出したのはてめぇの方だろうが』
「ん、悪い。で、なんだって?」
『……クロに対する依存をやめろっつったんだ』
先輩に対する依存?

「闇華」と俺が呼ぶこいつは、「闇」そのものだ
昔、とある事件を切欠に共生することになった
動けなくなり、ここの世界に逃げ込んだ俺の、一種の使命である
こいつのおかげで属性を身に着けたのだから、邪険に扱うわけにはいかない
だから偶にこうして会話をかわす
こいつと話すのは、同時に自分を振り返る切欠になる

『お前はクロに依存しすぎなんだよ。そんなんだから心配される』
「馬鹿野郎。俺にだって自立心位あるわ」
『……昨日、資料を間違って刷ったのは?』
ぎくっ
『一昨日集合時間を間違ったのは?その前に人違いを起こしたのは?さらにその前に』
「あーもー、うるさいな!」

「……そうだよ。今でも寂しいよ」
『ほれ、本音が出た』
「るっせぇ」
ふてくされて弁当をつつく。お、この唐揚げ旨いぞ
『妙な方向に話を振ろうとするんじゃねぇ』

『いいか、お前は何かにつけてクロに頼りっぱなしだった。自覚は?』
「あります」
『で、そのクロがいなくなってからポカばっかりだった自覚は?』
「あります」
『クロの奴もほとほとお前に愛想が尽きたんじゃねぇの?』
「……そうかもしれない」
『なー、そう思……って、はぁ?』

確かに先輩に出会ってから、俺は先輩に頼りすぎだった
仕事に支障が出るほどに
やっぱり先輩に愛想をつかされたのだろうか
……面目ない
『わ、悪い言い過ぎたって。謝るから、な?』

「……俺、変われるかな?」
先輩が心配しないように、立派な人間になれるだろうか
『……さぁな』
こんな「闇」まで抱えて
「……先輩」


あの頃は、懐かしいというほど遠くはない筈なのに
何故か胸が締め付けられる
先輩は、何を考えて中央に向かったのだろう
その答えは、どこかに落ちているのだろうか

『ないなら探すしかねぇ』
そう、探すしか、ない