バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

41 お節介な新聞記者

いつも通りの朝。いつも通りの朝食、挨拶、道。
ルソーは、敷かれたレールの上を歩くように今日も過ごす
一昨日、『殺戮紳士』に襲われたのが嘘に思えるほど、静かで何もない日常

「ルソーさーん!」
不意に後ろから声をかけられ、ルソーは振り返る
「コマチさん」
ルソーに呼ばれたヒナコはローラースケートで地を滑り、あっという間に彼の横についた

「一昨日、大丈夫でしたか? なんか、辻斬りに襲われたって聞きましたけど」
前置きもせず本題をぶつけるヒナコ
ルソーは縦に首を振って見せた
「正確には、空から降ってきましたが」

「その時の話、聞かせてくれない? ほら、ルソーさん弁護士だから、絶対地元紙に載る事件ですよ」
「お断りします。他をあたってください」
「えー」
精一杯のブーイングをヒナコが叫ぶ

「……まぁ、いいですよ。断られるのはわかってたんで」
ペンを胸ポケットにしまい、ヒナコは手帳を閉じた
「危険な時は周りを頼ってくださいね? 私ならいつでも相談に応じますから」
「感謝します。それでは」

やや疲弊した声をあげてルソーは立ち去った
「……本当は、あの現場に私もいたんだけど、ね」
小声で、ヒナコはそう言った