バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【アンサーズ外伝】彼らが「えんぴつ党」

『問題(心理学):幼児期(2歳ごろ)に獲得される「心の理論」が成立しているかどうかを検証する課題を何というか』
「サリー・アン課題」
チャイムの音。はじけ飛ぶモンスター
『Qモンスター(心理、倫理学)、クリアしました』というアナウンスを聞き、彼はホルダーにペンデバイスを収納した
緊張が解け、ふっと一息吐く彼は、学ラン姿の背の低い男であった

「いやぁ、お見事だね」
ぱんぱんと手で乾いた音を鳴らし、彼に近づく男
長髪にマント姿の男は、人懐こそうな顔をして毒を吐く天才である
「君は社会科はてんで駄目だけど、倫理学においてはなかなかいい頭を持っているじゃあないか」
「……「サリー・アン課題」は、内容が実験的で印象に残ってただけだ」
学ランの男はそう返す

「というか、他の三人は何処にいったんだよ、シン」
シン、と呼ばれたマントの男は肩をすくめた
「残念ながら、はぐれてしまってね。僕は道を覚えているが、あっちは方向音痴がいる」
「素直に探しに行こうって言えよ」
学ランはシンにそう毒づき、ため息をもう一度ついた

「まぁ、焦らなくてもいいんじゃない? どうせその辺でQモンスターを討伐してるんだから、そのうち大きな音でもたてて」
シンがそこまで言った時
やや遠方で閃光と爆音が飛んできた
「……ほーら、ね」
シンは慌てることなくそちらへと歩を進める
学ランは頭をかき、シンの後をついていった



「ふぅ、やっぱりここに来ればそこそこの問題があるから、腕試しには丁度いいな!」
一方、先ほど閃光を散らしてモンスターを討伐したパーカーの女が、汗をぬぐいながら言った
「そ、そうですね。でも、その、奥に行きすぎなのでは……」
ついてきた三つ編みの女が小声で返す。それに、セーラー服の人物が同乗する
「そうニャ。ナツミが調子に乗って奥に進みすぎて、もう辺りは木しか見えないニャ」

「うーむ、まいったな。確かに奥に進みすぎた。私の感覚ではさっぱりわからん」
「大通りで道に迷いますからね、ナツミさんは……」
三つ編みがやはり小声で呟いた

「あ、やっぱりいた。おーい」
そこに、遠くからシンと学ランが合流してきた
「シン! 待ちかねていたぞ、どこに行ってたんだ!」
「調子に乗って移動してたのはナツミの方ニャ」
そう呟いたセーラー服を、赤髪の女、ナツミは軽く小突いた
「そういうことを言うな、ネコメ」

「で、では、そろそろ帰りましょう。もうじき日暮れですし」
「うん、グラスの言う通りだ。この辺は本当に森だからね。暗くなっては迷って抜けられなくなる」
全員で岐路につこうと踏み出したその時

がさがさと茂みが鳴る
全員の視線がそちらを向く
「……帰る前に出たニャ」
「どうしようか。このまま無視して帰ってもいいんだけど」
「そんなの、党首である私が許さないぞ」
「で、でも、みなさん疲れてますし……」
言いよどむ一行をよそに、一人、ホルダーからペンデバイスを引き抜く人物がいた

「……俺がやる」
「ちょっと、大丈夫な訳? さっきは運よく倫理だったけど、この辺は君の大嫌いな社会科系が多いんだよ?」
シンが半ば茶化すように、ペンデバイスを構えた学ランに言う
しかし彼はそのペンデバイスを下ろすことなく返した
「今、一番下っ端にいる俺がお前らに追いつくためには、数をこなすしかないからな」

「ふむ、それもそうだな」
ナツミが顎に手をあて呟いた
「いいだろう。我々は助太刀に徹する。一人でどこまでやれるかやってみろ、大黒屋」
「……了解した」
大黒屋と呼ばれた学ランの男は、正面に紫のシールドを張った

西園寺ナツミ
佐々木シン
雪村グラス
逢魔ヶネコメ
大黒屋エイスケ
彼らは、とある学園の学力向上団体「えんぴつ党」の一員である