バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

48 いなくなった彼と彼

「ええ、その件に関しては本当にご迷惑をおかけしてます」
「――」
「まぁ、そういわれると、計り知れないものなのかもしれませんね」
「――」
「……もうお分かりの筈でしょう、僕がどうしてここに来たか」
「――」
「あくまでしらを切りますか」
「……」
「では、率直に申し上げます。皆さんの前に現れてください」

「「エミ・フルイセ」」



「……おかしいわね」
翌朝、やや遅くにアイラが起き上がると、フブキが部屋の中をうろうろと歩いていた
「どうしたんすか、フブキさん」
「昨日の夜から、ルソーが帰ってこないのよ」

「ルソーさんが、お戻りになられない?」
後ろからついてきた草香も顔をのぞかせる
「仕事が泊りがけになったんじゃないんですか」
「だとしたら、連絡の一つくらい入れてくれる筈でしょ? こんなことなかったのに」

「アイラさん、まさか、裏の仕事がかかわってることは」
小声で草香は呼びかける。アイラは首を振った
「『弁護士』に限って、連絡する間もなく殺されるなんてことはないだろ」
「そう、ですね。あの人なら何かしらの手段で連絡を取ってきますから」

「フブキさん、とりあえず、その、落ち着こう」
なだめるようにアイラは言った
「今焦ったって、何も手立てがないんじゃ仕方ない。なら、手立てができるまで待つしかないと思うんです」
「……そうね。ルソーなら、大丈夫よね」
自分に言い聞かせるようにフブキは言った



いつも通り過ごしながらルソーを待とう
そう決めてから既に六時間が経とうしていた
昼ご飯を終え、あらかた片付け終えたとき、アイラは机の上に置いた自分の携帯端末が光ってるのを見た
メールが届いていたらしい
フブキの教えもあって簡単な文章なら読めるようになったアイラは、携帯端末を起動させる
そこに届いていた一通のメールは、知らないアドレスからで、出だしにはこう書かれていた

『『弁護士』は、わたしがかくほした』