バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

74 狡猾な野郎

「ハシモトのこと、ですか」
夕飯時、ハンバーグを一切れ飲み込んだルソーはフブキに言う
フブキは少し憂いたように頷いた

「ほら、貴方やアイラをよく飲みにさそうけどさ、私も、幼馴染として何かやれないかなって」
「と、いいますと」
「心配なのよ、ハシモトが。ああ見えて、どこか病んでるんじゃないかって思って」

「あの骨が病んでるわけないっすよ、フブキさん」
付け合わせの野菜をつついていたアイラが、ルソーのかわりに返した
「あいつは、誰もが思っている以上に丈夫な奴だ。出会って日は浅いが、俺でもわかる」
そう言って、アイラは真剣な顔で言った

「あんな狡猾な奴が、他にどこにいるっていうんだ」




「……あっぶねェなァ」
ミツミの振り下ろしたスパナは、ハシモトが突然頭上に現した拳銃により受け止められていた
ミツミの息がつまる。その間にハシモトはミツミの手からスパナを叩き落とし、立ち上がって拳銃を向けた
が、カチカチと音が鳴るだけで発砲はされない
「ちっ、いかれやがった。重かったもんな」

ミツミは踵を返し走り出そうとしたが、その鼻先に突如、ナイフが向けられた
視線の先には、ライター頭の長身な男
「……おい、わざわざこれだけのために引き留めてたのかよ」
「悪ィな、『篝火』。報酬ははずんでやる」
ハシモトはそう言い、ミツミの肩を叩いた

「どうしたんだ、ミツミ。借金地獄から救ってやった恩を忘れたか?」
「……君のやり方に、納得がいかなかった。あれは「救っている」なんて言わない」
「ふーん。じゃあ、ここで殺してもいいわけだ」
ハシモトはそう言うと、左胸からマシンガンを引きずり出し、ミツミに向けた
「!? 君、いつからそんなものを」
「その話はまた今度でいいじゃねェか。あ、それとも今ここで情報漏えいしちゃうか?」

「なぁ、ミツミ。俺はお前とは友好的に行きたいわけなんだよ。でもよ、そっちが反抗心見せるならこっちだって「躾」しなきゃならねぇだろ? うん?」
前方のナイフ、後方のマシンガン
ミツミは完全にお手上げ状態だった

「……そうだな。今日の俺は機嫌がいい。一つお願いを聞いてくれたら、この件はゆるしてやる」
ハシモトはそう言い、マシンガンを捨てた
ミツミは小動物のように怯えながらこちらを見る
「その、お願いというのは……」

「「こいつ」の修理だ」
ハシモトは、目の前に「それ」を置いた