バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

79 そのはるか上へ

響く発砲音、飛び散る赤い液体
ルソー達四人は襲い来る警備員をなぎ倒しながら上へと目指していた
「流石に上まで来ると警備も厳重だな」
「……皆、先に行ってて」
そういうと、ヤヨイは足を止めて振り返った

「『仕立て屋』さん!」
「私がこいつらの足止めしてるから、早く上まで行って!」
「でも……」
困惑する草香の手を、ルソーが引いた
「『仕立て屋』、危なくなったら撤退してくださいよ」
「わかってる」
ひとつ頷いて階段を駆け上る三人を見送り、ヤヨイは左胸から糸を取り出した
「私だって成長してるんだからね、ルソー君」

滅茶苦茶な位置にある階段に振り回されながら上階までたどり着いたころ
「そこまでだ」
不意に、正面から声をかけられた
目の前には、眼鏡をかけ、電子端末を抱える男
「『猿回し』……!」
アイラは、自分を死に追いやろうとした憎き男の二つ名を呼んだ

「いやぁ、まさか君たちの方から来てくれるだなんて思わなかったよ」
端末を操りながら『猿回し』は言う
「けど、悪いな。お前たちにはここでくたばってもらう」
ピッと、端末が音を鳴らした

瞬間、フロア全体が揺れ出した
何事かと周りを見渡すと、『猿回し』の背後から、奇怪なものが現れた
頭の二つある、巨大な動物が二頭。見ているだけで気持ちが悪い
「こいつらはうちで研究している生物兵器の試作品だ。こいつでデータをとらせてもらうぜ」

「……おい、『弁護士』」
アイラが小声でルソーに声をかけた
「こいつらは俺と『最初の雑人兵器』が相手をする。お前は先に行け」
「……わかりました」
ルソーはそう言うと、先陣切って走り出した

彼の道を開くように、アイラが鎖を飛ばす
尚も邪魔をしようとする『猿回し』の足元に、草香の銃弾が飛んだ
『猿回し』が二の足を踏んでいる間に、ルソーは奥へと進んでいった

「……いいだろう。どうせ、うちの『ボス』には勝てやしない」
『猿回し』は呟いた