バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

来し方行く末

「だいぶ寒くなってきたな」
窓をあけて換気を行いながら柿本が言う
それを片耳に聞いていた梨沢が「そうだな」と返す
「まだ気温は安定しないけどな。昨日はそこそこ暑かったじゃねぇか」
「そうだけどさ」

「……なぁ、柿本」
不意に思い立ったように、梨沢は口を開いた
「何だ、梨沢」
「お前、どうして異探偵に加入したんだ?」
「どうして、かぁ。一つには、自分が異端な存在であることを苦しく思ってたからかな」
柿本は少年の姿をしているが、性別は女である
世に男性らしい女性は数あれど、彼女のように本当に身も心も男になろうとしているものは少ないだろう

「それは、やっぱり梅ヶ枝の誘いがあったからか?」
何の感情も持たずに梨沢は再び問う
「そうだな。俺が異探偵に入ったのは梅ヶ枝の誘いがあったからかな」

「……梅ヶ枝は、なんでもやってるんだな」
梨沢はぽつりと呟いた
「うん、そうみたいだな。俺ら以外のメンバーも、皆、梅ヶ枝の誘いに乗ってここにきてるみたいだし」
「鬼才さんから聞いたんだよ。異探偵設立時は鬼才さんと梅ヶ枝の二人だけだったって」
梨沢は読んでいた本を閉じ、前を向いた

「梅ヶ枝がいなけりゃ、ここは機能していない。やばい事態だと、俺は思うんだけどな」
「……そう、だよな」
柿本が弱弱しく肯定したのを聞いて、梨沢はため息を吐いた