バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

完璧主義者のSOS

カツン、カツン
アスファルトを叩く音が響く
彼は腹部を押さえながら、少しずつ、前へと歩いていた
人が少ない場所へ。できるだけ広い場所へ

迂闊であった。彼は思う
さほどレベルの高いルイウではなかったが、うっかり傷を負ってしまった。これがいけなかった
完璧主義者である自分にとっては名折れにも相当する
兎に角何とかせねばならないのだが、近場に医療施設もなければ、薬も持ってなかった

やむを得ないが仕方なかった
彼は端末を取りだし、唯一彼を受け入れてくれた仲間へ、その端末をつないだ



「おい、梨沢。端末鳴ってるぞ」
柿本の指摘でそれに気づいた梨沢は、端末を取り上げる
「はい、もしもし」
「梨沢様、私でございます」

「どうしたんだよ。いつもは面と向かって物をいいたがる癖に」
「そうもいかなくなりました。緊急です」
やや息の上がった声を聞き、梨沢は姿勢を前に倒し、真剣な眼差しになった
「…どうした」

「先ほどルイウに襲われ、負傷しました。間も無く、暴走します」
梨沢の息がつまった。あいつが、マインドアウトする、だと? と唖然とする
「鬼才様を連れて直ぐに来て下さい。端末を繋げておきますので、道はそれに従うよう」
「お、おい、待っ……」

「ご迷惑お掛け致します。助けてください」
その言葉を最後に、通信が途絶えた

「柿本! 異探偵全員に連絡しろ! お前も来い!」
「なっ、何があったんだ!」
柿本の問いに答えることもせず、梨沢は支度を整えて飛び出した

信じたくなかった
いつでも起こりうる事態なのだが、完璧主義者の彼だけはそんなことはないだろうと思っていた
ワープして広場にたどり着いた梨沢は見た

臨戦態勢の、梅ヶ枝を