バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

82 反撃

「……ヒヒッ、さすがに多すぎやしねェか?」
家を囲む侵入者を薙ぎ払いながら、ハシモトは呟いた
「いくらなんでも、この人数を相手にするほど俺の気力は強くないぜ?」
そういうと、ハシモトはポケットから何かを取り出した
「……一人なら、な」



「伏せろ、『仕立て屋』!」
どこかからそんな鋭い声が飛んできたのを聞き、ヤヨイはとっさに身をかがめた
それを上から追い越す影が走り、ちょうどヤヨイの正面にいた警備員が血しぶきをあげて倒れた
「えっ……!?」
ヤヨイは振り返る。そこには『篝火』、『変態』、その他大勢の二つ名のある殺人鬼が並んでいた

「どういう、こと……?」
唖然とするヤヨイに、先頭に立っていたライターが答えた
「雇われたんだよ、あの狡猾野郎に」

「俺たちは『ハシモト』に平均2億で雇われた。まぁ、中には偏屈な報酬で引き受けたやつもいるみたいだがな」
ヤヨイはそこで、何故ハシモトが金に執着するかを理解した
「金と経験は力になる」。彼はそれを体現したのだ

「で、俺たちはそこに警備員たちを片っ端から殺せばいいんだな?」
ライターの言葉に、ヤヨイは頷いた
「お願い、『弁護士』たちを助けてあげて!」



「分析完了、今ならいけます!」
草香はそう言って、高い声を上げた
途端にその場にいた化け物たちがもがきだす

『猿回し』の武器は、端末から出る音波だった
これを操ることにより廃人や化け物を操っていたのだ
アイラは素早く飛び込み、化け物の首を次々と折った
「あとは……!」
アイラが『猿回し』に照準を合わせる
そのとき

連続した発砲音と同時に、『猿回し』がバランスを崩した
その機会を見逃さなかった草香が、彼にまっすぐ右手を向ける
彼女の砲台は、ミツミの改造によりマシンガンが撃てるようになっていた
跳ね上がり、打ち付けられる『猿回し』の体。彼の端末は壊れ、敵一同は動かなくなった

「やぁ、間に合ってよかったよ」
その声に振り返ったアイラと草香は驚いた
そこには壊れたはずの『殺戮紳士』……名瀬田がいたからである

「お前、なんでこんなところに!」
「どういうわけか直されたらしくって。ああ、構えないでいいよ」
臨戦態勢になる二人に名瀬田は手をふった

「修理の際に思考回路もいじられたらしくってね。本能的に「悪い虫」であるはずの君を攻撃できなくなってしまってるんだ。だから安心して」
「……」
怪訝な目を向ける二人であったが、名瀬田はけらけらと笑っていた

「そんなことより、上に用があるんでしょ?僕も手伝ってあげるから、いこう?」
名瀬田の提案に、二人はあいまいに頷くしかなかった



一人、また首筋を食われて倒れこむ
ハシモトはその様子を見ながらぼやいた
「ったく、マシンガン使いながらこいつら操るとか、正気の沙汰じゃねぇよなぁ」
ハシモトは視線を下す。その先にいたのは、かつて亡くなった『狗』がつかっていた犬の群れ
「『仕立て屋』に笛の使い方叩き込まれて正解だったぜ」

ハシモトはマシンガンの先を見据えながら、笛を吹いた
「存分に暴れてやれ……!」