バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

84 その後の話

記者会見場に現れるスーツ姿の重役
今回、カルミアグループが壊滅的な打撃を受けたことに対する説明が行われようとしていた
全員が一様にペンを持ち、メモを握り、カメラを向ける

「犯人グループの所在に関しては現在調査中です」
無論、そんなことはなかった。先陣切って当主に大けがを負わせたルソーの居場所は特定されている
「調査が進行し次第、報告はいたします」
男がそう言って去ろうとしたとき

「あの」
声が一つ、部屋に響いた
全員の視線がそちらを向く
「あ、えっと、コマチ・ヒナコといいます。一つ、質問よろしいですか」
「……何でしょう」

「今回の事件、「赤髪の殺人鬼」がかかわっているとお聞きしましたが、本当ですか?」
自分の中で燃える熱を抑えながら、コマチは言う
「そうですが」
「ということは、カルミアグループには「襲われるべき理由」があったんじゃないですか?」

彼女は今、これまで手に入れた「彼」の情報を行使しながら問い詰めた
「彼が殺しを働くときは、必ず理由が存在します。理由もなしにこんな大財閥を襲うわけがありません」
「はっ……。何を根拠に」
「実際に「襲われた」経験ですよ」
コマチは言い切った

「とにかく、そのあたりを説明していただきたいのです。カルミアグループは何をやったのですか」
コマチの畳みかけるような質問に、男は何も答えずにその場を立ち去ろうとした
しかし、そこに立ちふさがる一人の女性
彼女は袖から白いペンを取り出すと、その先を男に突き刺した
「自白剤でしてよ。正直に話していただきますわ」
「!?」
男は何か言おうとしたが、それもかなわず崩れ落ちた

「さぁ、皆様」
女性……『水仙』は言った
「今から二時間、この人はなんでも正直に白状しますわ。どうぞ、お好きなように」



「復讐が終わったからと言って、すぐに裏世界から抜けられるわけではない」
ハシモトの言う通り、知名度の上がった自分には、不要な依頼と挑発的な乱暴者が立ち並んでいた
「予想はしていましたよ。もしかしたら、一生抜けられないかもしれない」
でも、とルソーは言った
「それでもいいんです。僕は、姉さんがいればいい」
「相変わらずのシスコンぶりだな」

「ルソー、忘れ物はない?」
フブキが玄関口まで見送りに来てくれた
「今日は皆でご飯食べたいんだけど、早く帰れそう?」
「大丈夫だと思います。丁度、仕事の依頼もありませんので」

「それでは」
ルソーは一つ息を吸って言った
「行ってきます」

その姿は、まさしく「凛とした殺人鬼」だった