バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

1 赤い髪の男

その姿を見かけたのは偶々だった
いつもは素通りするはずの公園に、見かけない人がいたのを見つけたからだ
型が崩れよれよれになったスーツを着たその男性の髪の色は、目に痛いほど赤かった

見かけた青年は気になって彼のもとへ歩み寄った
それに気づいた男性は苦笑いをする
「どうした、青年。この髪の色が気になるか?」
「あ、はい」
男性は困ったように視線を泳がせる

「ああ、いるんだよな、そういう人。不良にも絡まれるし、職務質問されるし。いいことないな」
「珍しい髪色をしてますよね。染めたんですか?」
男性は首を振った
「元々、こういう色をしてるのさ」

男性はそれだけ言うと立ち上がった
そうしてどこかに手を振る
彼の視線をたどると、人が二人、こちらに手を振っていた
帽子を目深にかぶっていて顔はよく見えない

「悪いね、青年。俺はこれで」
男はそういうと、その場を立ち去ってしまった