バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

2 作戦会議

マンションの一室には奇妙な人々が揃っていた
全員胸元にマークの入った黒いジャケットを着こみ、頭髪を赤でそろえていた
そこに入ってきた一人の男

「もう、遅いじゃないですか、一隻さん」
男の名は一隻似長
長い髪を一つにまとめている。その髪色も例外なく赤かった
「いやぁ、こう髪を結いあげるのに時間がかかってしまって」
「私は素敵だと思うわよ。こう、こだわりがあるっていうのかしら」
ストレートの髪の女性が笑う
似長は彼女の頭をぽんぽんとたたいた
「ありがとう、夢宙」

「さて、全員そろったかね」
ソファに座る男が声をかけた
柔和な笑顔を浮かべているが、やはりその髪の色も赤い
「雷堂さん、今日はどうしたんだ?」
似長は尋ねる
それを制するように男、不破雷堂はすっと指を立てると言った
「攻める準備をするんだ。今夜、都内で暴動が起こる」



時は2×××年
世の中には超能力がはびこり、人口の約半数が特別な力を有する超能力者になっていた
自分の力を過信する超能力者による犯罪が増加し、警察には手が負えない状態になっていた

そんな時に力を貸そうと現れたのは、『執行人』と呼ばれる特殊な能力者だった
彼らは超能力者でもさらに1%にも満たない人口しか存在しない
彼らが一声発すれば、その場は沈静化すると言われている
彼らは決まって黒いジャケットに赤い髪で現れる
そう、ちょうど似長たちの姿のように



「雷堂さん、今回はやめておいたほうがいいと思います。これは絶対大々的に報道される。我々の正体がばれてしまうかもしれません」
ソファに座った少年、宇木清光が言う
雷堂は顎に手を当てる
「ふむ、確かにそうだね。我々の正体は絶対的に極秘であり、極一握りにしかばれてはいけない……。では、こうしてみようか。警察にあえて表で堂々と行動してもらうんだ」

「また警察の世話になるのかよ。面倒だな」
似長の隣に立っていた男、権呉道男がため息をついた
「まぁまぁ。警察と仲良くなってて損なことはないし、ここはおとなしく従っておきましょう? ね?」
ストレートの髪の女、五里夢宙が道男をたしなめるように言った

「あたしは楽しみだけどな、久しぶりの『お仕事』!」
二つに髪を結いあげた女の子、三冠紫苑が浮足立つような声で言った
「俺さ、最近発声練習してないから声出るか心配なんだけど」
似長が笑いながら言う
それを清光が咎めるように返した
「あれほど発声に事欠くなと言っているでしょう。我々の能力は、発声なしでは扱えないのですから」
「まぁまぁ、本人もそこはわかってるはずだからいいだろう」
雷堂は清光をなだめると、一同を見回した

「各自、準備次第もう一度ここに集合だ。正義の「執行」は我らにあり」