バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

6 出撃用意


紫苑に小突かれるまで似長はうとうととしていた
何もない平和を味わうことを中断させられ、やや不満げに似長は紫苑を見上げる
「不満そうだけどそれどころじゃないの!」
紫苑は似長を引っ張って居間に出た

居間にはいつもの顔ぶれに交じって白と八雲の姿があった
「何何、一体どうしたんだよ」
「似長さん、事件が発生しました。誘拐です」
白は切羽詰まった声で言った

「身元は明かせないが、そこそこ羽織のいい家の子供がさらわれた。巨額の金を請求している」
「ねぇ、どうしよう。私たちでなんとかならない?」
紫苑が似長の服の裾を引っ張る
「何とかするってったって、この人数がぞろぞろ向かうわけにはいかねぇだろ」

「二人」
やや離れて座っていた清光が言った
「警察部隊に紛れて二人、で十分だと思います。どうせ誘拐を考えるほどのちんけな頭しか持ってない連中です」
「ふむ、それには賛成だね」
仕切り役である雷堂が頷く

「では、その役目は似長君と道男君に任せようか」
「は!? 何で俺!?」
食いつくように迫る道男だったが、その奥襟を似長に引っ張られた
「どうでもいいだろ、理由なんざ。ほら、準備しようぜ」
「面倒くせぇー!」

「……あんな二人で大丈夫なんです?」
白が問う。それに夢宙が答えた
「やるときはやる人たちだから、大丈夫よ。安心して案内してあげて」