バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

5 夜の時間

「道男ってさ、昔スポーツやってたの?」
町内のグラウンドのベンチに座り、駆け回る子供たちを見ながら似長は隣の道男に訊いた
二人はジャージに袖を通し、道男は帽子をかぶっている
はた目からすると不良にしか見えないので、人にかかわることは避けている

「昔っていつだよ」
「そりゃ、昔も昔」
「あー……、ラグビーしてた」
「お、確かにやりそう」
「からかってんのか」

グラウンドを駆け回る子供たちはサッカーに夢中になっている
さわやかな風。子供の笑い声
本当にここ最近、暴動が頻発しているのか疑わしくなってくる

「こんな時間が続けばいいのにな」
「夜は嫌いだ。夜は、犯罪者の街になる」
道男は呟いた
「そして夜は、『執行人』の時間になる」

「……帰ろうぜ、道男。買い物、済ませてさ」
似長が立ち上がる。道男はそれを見、大きく息を吐いて立ち上がった