バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

7 奪還

「おー、いるいる」
隠れながらも一つの建物に密集する警官を見ながら似長は呟いた
誘拐犯の居場所は特定していたが、犯行グループは拳銃を所持しているらしい
超能力持ちの情報も入っておらず、一向に動けない状況だった

「どうするんだよ。とりあえず連れてきたけど、なんか策は練ってるんだろうな」
八雲が小突く
似長は道男を見上げた。丁度こちらを見下ろした彼と目が合う
「……考えてることは、同じらしいな」
「ああ」

「八雲、俺たちが合図送ったら突入できるように指示しておいてくれ」
そう言って似長と道男は物陰からはい出た
「はぁ? おい、何考えてるんだよ!」
「いいからいいから。行くぞ、道男」
「指図すんな、似長」

バン! と音高く似長は扉を開いた
ほぼ同時に銃器の音が聞こえる
「何だ、貴様らは!」
「あれぇ? ここが騒がしいって聞いてきたんだけど、間違ってたかな?」
笑いをこらえたような声で似長は言った

「だから、その原因突き止めて静かにさせようって魂胆だったんだけど……」
似長は現場をさらう。部屋のほぼ中央に子供が縛られて転がってるのを見た
「間違いないようだな」

不意に似長は蹴りだした
全員の銃口が慌てたように似長に向く
その時

「『潰れろ』!」
道男が右手を突き出し、こぶしを握りながら言った
すると、メキメキと音を立ててその場にあった銃器があっという間にねじれ、潰れていく
「なぁっ!?」
「何だ、これ!?」
犯行グループが動揺しているあいだに似長は子供のもとにたどり着く

「道男、耳塞いでろ!」
「ぶちかましてやれ、似長!」
道男が耳を塞ぐのを確認し、似長は右手を握って親指を立てた
そしてそれで首を切りながら叫んだ
「『逝け』!」

その場に風が巻き起こる
気圧された犯人たちが次々とその場に倒れる
「突入!」
似長は子供を抱え上げながら叫んだ



「相変わらずすげぇな、『執行人』」
運ばれていく気絶中の男たちを見やりながら、八雲は言う
かく言われる似長と道男はもう帰路についていた
「……まったく、何を考えてるかわかったもんじゃねぇけどな」
八雲は赤い髪の後姿を思い出しながら言った