バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

11 攻撃

「気を付けろってったてなぁ」
空を仰ぎながら似長は道を歩く
その横で紫苑がうーんと唸っていた
「私たちの存在って、基本的に秘匿にされてるんだよね? ただの通り魔に襲われたのかな」[
「清光に限ってただの通り魔にやられると思うか?」

似長は天を仰ぎながら言う
「相当の手練れだと思うぜ、俺は。何を考えてるか知らないけど」
「うーん……」
紫苑が腕を組んで唸る

そこに
「……あ」
「どうしたの、似長?」
「あれ、ちょっと挙動不審じゃね?」
似長が指さした先にはきょろきょろとあたりを見回す一人の人影があった

「何かあったのかな。あのー、すみませーん」
紫苑が声をかける
その人影はこちらに気づき一瞬視線を上げたが、一目散に逃げだした

「あっ、待て!」
反射的に似長は走り出す
それに慌てて紫苑がついていく
人影は路地裏に転がり込む。似長はそれについていった
そこに

「! 似長、「上」!」
紫苑が叫んだ。似長は止めようとした足を無理に動かして先に進んだ
その時、カッという音と共に地面にナイフが突き立った

似長は振り返り、上を見上げる
人影はどこにもなく、完全に見失っていた
「何だ、今のは……」
「さっき、上の人が待ち構えてたみたいで……。遠すぎてよくわかんなかったけど」
「何を考えてるかわからねぇな。紫苑、報告に行こう」

その場を離れていく似長たちを、上から何者かがのぞき込んでいた
「……『執行人』、余裕でいられるのも今のうちだよ」
彼はくくくと笑い、その場を去った