バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【アンサーズ外伝】雪村は友達が少ない

カチャカチャと音がする
えんぴつ党の部室の端のほうで、一人の少女が何かをいじっていた
「やぁ、諸君! ……って、まだ誰も来ていないのか」
その部屋の扉を開け、西園寺は言った

「皆さん、まだホームルームが終わってないそうなので」
部屋の端で作業をしていた少女、雪村は返した
「ふむ、ならば仕方ないな」
西園寺はつかつかと雪村のほうへ歩いて行く

「今日は何を作っていたんだ?」
「あ、これ、机のクリーナーです。スイッチを入れたら、自動で机の小さなゴミをとってくれるんです」
雪村は手に取った機械を西園寺に見せた
「消しゴムのカスなんかを床にまき散らすのもよくないと思いまして」
「すごいじゃないか」

「雪村の家は元々発明家の家なのか?」
「いいえ、両親とも文系です。私は理系なんですけどね」
彼女、雪村グラスはえんぴつ党きっての理系科目担当である
数学、理科も彼女にかかればあっという間に解ききってしまう

「家では自分の部屋より倉庫にいることが多くて、両親も友達も、それで敬遠して」
でも、と雪村は顔をあげた
「えんぴつ党の皆は私を許容している。それだけで十分です」

「いいや、許容じゃない」
西園寺は雪村に笑って見せた
「必要なんだ、君の力が、我々えんぴつ党にはな」
「……!」

「さて、そろそろほかの人が来る。かるく掃除でもしておこう」
「はい!」
雪村には友達が少ない
ただ、それでも彼女は満足している