バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

14 記憶との差異

「似長さん、清光君は大丈夫?」
紫苑が心配そうに問いかける
「いや、かなりまいってるみたいだ。今はかかわらないほうがいいだろう」
似長は視線を落として答えた

帰ってきてすぐに自室に籠った清光は、食事の時間になっても現れなかった
仕方なく彼の部屋まで食事を届けたが、それを受け取っただけで扉を閉めてしまった
「何かあったのかい、似長君」
「……まぁ、な」
似長は言葉を濁した



「……」
ベッドに転がって清光は震えていた
気持ちの悪いものでも見たような、そんな感覚にとらわれていた
「……なんですか、あの女性は……」

清光は布団をかぶってうずくまった
「――は、あんなことしない。――は、もっと、もっと……」
頭をひっかき、清光は震えた
それは、今まで誰にも見せなかった、清光の「弱み」であったのかもしれない