バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

15 制約

「ふむ、なかなか減らないねぇ、『執行人』の犯罪……」
タブレットをつつきながら雷堂が言う
似長はその姿をぼんやりと眺めていた
「一大事なんじゃねぇの、それ。すぐにでも『執行人』捜しに出なきゃならなそうだけど」
「それが、そうもいかないんだよ」

雷堂に呼び寄せられ、似長は彼のタブレットを見る
「『執行人』の犯罪が増えだしたのとほぼ同時期に、『執行人』が犯罪にあう件数もわずかながら増えだしてるんだ」
「なんだそれ、よくわかんねぇな」
「簡単に言えば、立場的にも、人口的にも、『執行人』の存在が危ぶまれているってことさ」

「今から紫苑と買い出しだろう?気を付けて行ってきてね」
雷堂は似長の頭をぽんぽんと叩いた



「それで、さっきから周囲を気にしてるの?」
紫苑は半ば呆れたように声を上げた
「怖がりすぎなんじゃないの?」
「でもよ、『執行人』殺すって、相当技量がないと難しいんじゃねぇの」
「初心者の『執行人』は能力の「制約」もよくわかってないからやられてるんじゃないの」

「……ふーん、「制約」か」
不意に、後ろから声をかけられ、二人は振り返る
そこにはすらりと背の高い男が、微笑みながら立っていた
白髪交じりの髪、褐色の肌、ヘーゼルの瞳がどこか異国感を感じさせる

似長は紫苑をかばう位置に立った
「やだなぁ、警戒しなくても、会話できれば僕は十分なんけど」
「てめぇ、さっきの会話に割り込んで、何を聞くつもりだった?」
男はにっと純粋に笑うと、ナイフを取り出して似長たちに向けた

「僕は『執行人』を裁く者。もっと『執行人』のこと、教えてくれないかなぁ、『執行人』さん」