バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

18 勧誘

茄子池優斗、と、男は名乗った
そして、『執行人』が反吐が出るほど嫌いだとも、微笑みながら言った
「さて、何から話してくれるんだい? 僕は、何も信じる気はないけどね」
どうやら茄子池の意志は固いようだった

「お前、どうして俺たちを狙ったんだ? 『執行人』の会話していただけで襲ってきたみたいだが」
「言ったじゃないか。僕は『執行人』が大嫌いなんだ」
「何か、理由があるんじゃないの?」
「それを話すことはできないね。あくまで君たちは敵なんだし」
これでは一向に話が進まない

「ふむ、動機を話してくれないのであれば、こちらも誤解の解きようがないね」
雷堂は腕を組んで言った
「よし、ならばこうしよう」
「……?」

「君、少しここを手伝ってくれないか」
「……は?」



「ということで、今日からここでお手伝いをしてもらうことになった、茄子池君だ。皆、よろしく頼むよ」
雷堂はニコニコしながら、隣の茄子池を引き寄せて言った
それに、似長と夢宙を含む『執行人』一行があんぐりと口をあけた
茄子池はやや困っていたようだったが、それも殆ど表に出さずに微笑んでいた

「ここで我々の手伝いをしていれば、君なりにも何か掴めるかもしれない」
雷堂は茄子池にこう言って勧誘した
茄子池はしばらく迷ったが、外出の自由を条件にそれをのんだ
「この事務所では異能力は規制される。ナイフもしばらくは返さないつもりだけど、そこは許してほしい」
雷堂は申し訳なさそうに言った

「ちょっと、雷堂さん、こんな危険な人、ここに置いてていいんですか」
紫苑が小声で声をかける
雷堂は笑顔を崩さずに答えた
「襲ったことは許されない行為だが、彼をもとに『偽物の執行人』の情報がつかめるかもしれない。今は我慢だよ、紫苑」