バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

19 一つ

「よう、清光。調子はどうだ」
夜食を持って似長が清光の部屋に入ると、清光はパソコンの画面を凝視していた
「おかげさまで、いくらか回復はしました。まだ完全ではありませんが」
「そうか。ほら、夜食」
「そこに置いておいてください」

「一体何を調べてんだ?」
似長はパソコンの画面をのぞき込む
だが、文章だらけのページが開かれているだけで、似長には内容が理解できない
「以前、雷堂さんが言ってた『偽物』について調べていたんです」
清光は答える

「どこかで僕たちの存在がばれて、それを悪用する人がいる。ということは、疑似的に僕らの真似ができるのではないかと思いまして」
「真似って、「あれ」を? 相当難しくないか?」
「ええ。条件もありますからね」

「一つ、執行人は人を殺してはならない」
清光はそばに置いていた紅茶を含んで言った
「たとえ自覚がなかったとしても、あれだけ『執行人』が暴れていれば噂が立ちます。この通り、真っ赤な髪をしているわけですからね」
「だが、噂にも立たないということは、何かが本物とずれているってことか」
「そういうことです」

「とにかく、外回りには気を付けてください。茄子池さんのように、あなた方を狙う連中が現れるかもしれませんから」
「ああ。忠告、ありがとう」
それじゃ、といって似長は部屋を出た

「……あらぬ罪で噂を広げられるような組織には、入りたくなかったんですが」
清光はぽつりとつぶやいた