バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

20 執行人と「死」

「『執行人』の「制約」と「掟」、か」
昼間の公園のベンチに似長は座っていた
「考えてみれば、よくわかってないことも多いなぁ」

「お兄さん、こんなところで何してるのかなぁ?」
不意に女性の声が聞こえ、似長は顔をあげる
そこには白が笑って立っていた
「何だ、白か。また職務質問かと思ったぜ」
「ふふふ、してもいいんですけどね?」
「遠慮しておくぜ」

「ところで、その『執行人』の制約? 掟? って、いったい何のことですか?」
横に座りながら白が問う
「あー……まぁ、白になら話してもいいだろう」

「俺たち『執行人』にはいくらか掟が存在してな。まぁ、こんな能力者だし」
「ほうほう、それが「掟」とやらですか」
「そうそう」

一つ、人を殺してはならない
一つ、正義を守る
一つ、容易に能力を使用してはならない

「まぁ、掟ができた裏には「制約」が存在するんだが、そこはいいだろう」
「……あの、似長さん。ちょっと気になる噂を署内で聞いたんで、聞いてもいいですか」
「何だ?」

「『執行人』は「死なない」っての、本当なんですか?」
似長は口をつぐむ
白は真剣に似長を見つめて続ける
「便宜上、『執行人』も死んだことになるんですが、現場にいっても死体を目撃したことがないんです」
「……」

「「死なない」ってのは間違いだ。俺たちだって、うっかりすれば死ぬ」
けど、と繋げながら似長は立ち上がった
「「簡単には死なない」のは、確かだ。なんせ俺たちは「一度死んだ身」だからな」
「……え?」

似長はそのまま歩き出した
「え、ちょ、ちょっとまってくださいよ似長さん!死んだって、どういう……」
白が追いかけるその背後の茂みが揺れた
一匹の白い猫が、飛び出ていった