バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

22 発見

似長と夢宙は路地裏に身を潜めていた
最近このあたりを徘徊する犯罪者がいるとの通報を受けたのである
「本当にここに出るのかよ……」
「仕方ないでしょ。民衆を守るために警察が通報したんだから私たちも協力しないと」

「……なぁ、夢宙」
似長はわずかに視線を落として言った
「『執行人』は、どうしてばれちゃいけないんだ?」
「あら、普通に考えてわからない?私たちは「本来いたらいけないヒト」なんだから」
「そう、なんだけどよ」

その時、チリンと小さな鈴の音がした
二人の視線がそちらを向く。その先には、白い猫が月を背後に佇んでいた
「あら、猫?」
「……」

猫は二人の姿をみとめると、にゃあと一声鳴いて背中を向けた
「……行かなきゃ」
「え?」
「あの猫、俺たちを呼んでる」
似長は猫の後を追いかけだした

細く入り組んだ路地を抜けると、開けた場所に出た
白い猫はいつの間にか見失っており、似長はその中央に二人の人間を見た
メイド服姿の女の子と、見覚えのある長髪の男
そう、似長につい先日『執行人』について尋ねてきた男であった

「ようやく見つけた。ここならだれもいない」
男は手に持っていたデバイスを見せる
地図上に浮かぶ赤い点
似長はおもわずジャケットのポケットを探った
小さな機械、おそらくGPSであろうその発信機が見つかった

「似長、もう、おいていかないでよ、……あら?」
後ろから追いついた夢宙が声を上げる
「君ならきっとここに来てくれると思った。私はどうしても、『執行人』を知りたい」
メイド姿の女の子が、一歩前に出た
「私は神原 朝希。彼女は花読 美紗。少し、我々に付き合ってほしい」

状況の整理ができないまま、美紗と呼ばれた女の子が蹴りだした