バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

26 赦し

それからの行動は早かった
雷堂と清光の指揮で朝希が今までかかわった『執行人』実験の被験者を洗い出し、優斗の目で照らし合わせたのだ
「移して与えた能力はしばらくすると消える。多分、最近になっても来ていた長期の被験者が犯行を起こしたかもしれない」
朝希の言葉を信じ、根気よく照らし合わせを繰り返し、ついにたどりついた
「……彼女だ。彼女が、僕の家族を殺したんだ」
優斗はようやく口を開いた

「今まで疑って申し訳なかったよ。ようやく君たちを信用することができる」
優斗は柔らかく微笑んだまま言った
「僕は警察に出頭しよう。今までの罪を償わなければならないからね」
「待っていただけませんか」
そう言ったのは、襲われた本人でもある清光であった

「確かに茄子池さんのやったことは許されることではないかもしれません。でも、それは彼の中の正義に従ってやったまでのこと。悪気なんてなかったとおもうのです」
「清光……」
似長は清光を見た
清光は一番年上の雷堂に頭を下げた
「お願いします。彼は今後ともここにおいてくださいませんか。きっと、正面から付き合えば、いい人だと思うのです」
雷堂はしばらく清光を見ていたが、やがてその視線を優斗に向けた
「……彼はこう言ってるけど、君の意志はどうだい、茄子池君」



音高く非常階段を上り、似長たち一行はとあるビルの屋上に向かっていた
朝希の協力で『執行人』の疑似的な力を手に入れた被験者が、そこに呼び出されていたのだ
ガタンと音を立てて扉が開く
似長は見た。そこに立つ、すらりと背の高い女性が微笑んでいるのを