バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

マシン語を話す少女

「あ? 真苅のこと?」
柿本は素っ頓狂な声を上げて梨沢を見る
テーブルについていた梨沢は皿のケーキをつつきながら返した
「そう。しばしば振り回されっけど、俺、あいつのことよく知らねぇなぁって」

「そもそもあいつは本当に「異端」なのか? 普通に考えて、会話して、女友達だっている。あいつがここにいる理由がわからねぇ」
梨沢の言葉に、柿本はあー、と声を漏らした
「入ったばかりの梨沢は知らねぇのか」
「おい、それでもだいぶ前から一緒にいるぞ」

「真苅はな、人との会話は本当は苦手なんだ」
柿本は梨沢の向かいに座りながら言った
「おい、あれで苦手なのかよ」
「押しが強すぎてな。嫌われることもけっこうある。ただ、あいつが本当に「異端」なのは別にあって」
柿本は机に肘をたてて言った

「真苅は「マシン語を話す人間」なんだよ」

マシン語……?」
首をかしげる梨沢に、柿本は笑う
「まぁ、早い話が機械に強いんだよ。その辺の端末から中枢機械まで、あらゆる機械を扱うのが得意なんだ」
「確かにしばしば機械をいじってるのは見かけたけどよ……」
紅茶を口に含みながら梨沢は唸る

「でもさ、そのことが公にばれれば、善良であれ悪党であれ利用されるかもしれない。この世界において機械がかかわらないことはほとんどないからな」
「だから、うちで「保護」してるってことか」
ビンゴ、と柿本は答えた

「つっても、結局は真苅も普通の女の子だ。その辺、配慮してやれよ」
柿本は笑いながら言う。梨沢は生返事を返しながら思っていた
真苅も、もしかしたら自分と同じような悩みを抱えた人間なのかもしれない、と