バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

14 適当な算段

「いざ一人にされると怖いなぁ……」
マヨイは一人歩きながら呟く
彼女は今、ルソーに言われて街中を歩いていた

「何も考えずに街を歩いていてください」
ルソーからの最初の指示はそれだった
確かにミカガミ町の街並みをちゃんと見ておきたかったので承諾したが、今になって後悔している
「ルソーさんは何を考えてるんだろう」

「あ、あの服、かわいいなぁ」
マヨイはショーウィンドウに駆け寄る
そして、それを見て気が付いた
映った自分の背後に、帽子を目深にかぶった男が近づいてきていることに

「……!」
マヨイは運動は得意ではない
しかし、とっさに彼女は走り出した
足音が追ってくる。やはり自分が目当てらしい

「ミカガミの街並みは入り組んでいます。適当で結構ですので、人のいないところを選んで走ってきてください」
ルソーの指示通り、適当な細い道を選んで走るマヨイ
それでも少しづつ、足音が近づいてくる
そして、開けた場所に出た時、マヨイは肩をつかまれた

振り返る間もなく首を何かが滑る
それは麻の紐
そして後ろからものすごい力で締め上げられた
声を上げようにものどを絞められて声が出ない
「た、す……」
マヨイの意識が途切れそうになったその時

不意にその力から解放され、前方に倒れるマヨイ
せきを込みながら呼吸を繰り返し、マヨイは霞む視界でそちらを見た
「マヨイさん、ありがとうございました。あなたなら、必ずここにたどり着くと思いましたので」
ルソーは男に包丁を突き付けたまま淡々と言った