バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

15 『リース』

「首絞め専門殺人鬼、『リース』ですね」
ルソーは包丁を向けたまま男に声をかける
「『リース』……?」
横で話を聞いていたマヨイは、その言葉に血の気が引いた
まさか、二つ名のある殺人鬼に自分が狙われるとは思ってなかったのである

『リース』は手に持った麻縄を見る
ルソーがすでに斬り裂いたそれは、もう使い物にすらなりそうになかった
『リース』は麻縄を捨てる
「まさか降参するつもりではありませんよね」
ルソーは包丁を構えたまま呟いた

『リース』が一瞬しゃがむ
その隙を狙ってルソーは『リース』に突っ込んだ。しかし
「うぐっ……!」
不意に喉がつぶされ、息を呑み込むルソー
その喉には、細い紐
『リース』が自らの靴紐をほどいて締め上げているのだ

「ルソーさん!」
マヨイは思わず叫ぶ
ルソーは慌てるでも叫ぶでもなく、まっすぐ包丁をのどに持ってきた
「成程、どんな紐でも殺害道具に変える。その噂、あながち間違いではなかったようですね」
そう言って、ルソーは喉元の紐を斬り裂いた

「ですが、いかんせん僕との相性が悪かった」
次の紐を用意しようと一瞬無防備になった『リース』にルソーは体当たりをかまし
そして、その勢いのままに包丁を胸に突き刺した

『リース』から噴き出した赤い血をかぶりながらも尚、平然としているルソーに、マヨイは「狂気」すら感じていた
「マヨイさん、帰りましょう」
ルソーが手を差し伸べる。マヨイはその手を取るのを一瞬ためらった
「……」
マヨイは自分で立ち上がると、ルソーに引っ張られてその場をあとにした