バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

19 分かれ道

「マヨイさん、ちゃんとついてきてる!?」
「な、なんとか……」
ぜーぜーと息を漏らしながらマヨイはヤヨイの後をついて走っていた
無論、『火花』と『閃光』を名乗った男二人もついてきている
向こうが背に重機を抱えている分こちらが有利に働いているのだが、その差は一向に広まらない
二人の身体能力も相当なものなのだろう

「なんであの人たち、あんなに速いんですか! こっちは必至なのに!」
自分の体力のなさを嘆くマヨイ
ヤヨイは先頭を走っていたが、やがて足を止めた

「ヤヨイさん!? 危ないですよ、早く逃げましょう!」
「ごめんね、マヨイさん。先に行ってて」
ヤヨイは自らの左胸から糸のついた針を取り出した
「私はあとからそっちにいくから」

「ヤヨイさん!」
「いいから、早く!」
ヤヨイの気迫に気圧され、マヨイは振り返りながらも先を走り出した

「おいおい、逃げるの諦めたか、『仕立て屋』さんよぉ」
「いや、先に逃がした方が『仕立て屋』かもしれない」
「どっちでもいいけどな。二人とも殺すって、俺たちで決めたんだから」
『火花』は背中の重機からホースのようなものを取り出してヤヨイに向けた

「そーれ!」
『火花』が吠える。同時にホースから噴き出したものは
「火!?」
ヤヨイはひるんで一歩さがる
その間に『閃光』があいだを通り抜けて先へ行ってしまった

「ま、待ちなさ……!」
すぐに追おうとするヤヨイの前に、『火花』が立ちはだかる
「あいつなんて放っておいて、俺と遊ぼうぜ、オネーサン?」
マヨイのことだ、きっと逃げ切ってくれる
行く手を塞がれたヤヨイは、そう信じるしかなかった