バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【おとぎ話の守り人】訓練の後

こつこつと部屋の中に踏み入る女
部屋はそこそこの広さがあり、暴れるにはちょうどいい広さであった
すっと、女は右手を上げる
瞬間、バチっという電撃音と共に部屋のいたるところから的が出てきた
女はいつの間にか握っていた拳銃で、的確に的を射抜いていく

『そこまで!』
一声高くそう宣言され、女は手を止めた
そうして振り返り上の方に設置された窓を仰ぐ

『さすがだな、マユミ・サンダーソニア。新記録だ』
スピーカーを通して聞こえてくる音声をまるで無視するかのように、マユミは出口に向かって歩く
「やれやれ、あの女はどうしてああも不愛想なんだ」
軍服に身を包んだ男はそれを見ながらつぶやく
「少しくらい愛想よくすれば、強くて優しくてモテるってのによ」

「誰がモテない、とでも」
いつの間にかそこに上がり込んできたマユミは問う
「いいや、何も」
男は首を振り、立ち上がった

「そういえば、ラビさんは」
マユミの問いかけに、男は肩をすくめた
「隣で剣の試験を受けてるぜ。見に行くか」
「いいですね。たまには見に行かなければ、あの医師は何を考えてるかわかりませんので」
それはお前のことだろう? と男は言おうとしてやめた

一方、隣の部屋では
すっかり荒らされた部屋の中央で、片刃の剣を握った男が汗をぬぐった
『ラビリンス・グロリオサ。相変わらずその腕は落ちていないようで』
「そりゃ、どうも」

『どうだ。我々はその腕を見込んでいるんだ。今からでも遅くはない。戦士の道に戻る気はないかね』
上からの呼びかけに、ラビリンスは嘲笑した
「生憎だがお断りだね。俺は医師の道を行くと決めたんだ」
そうして彼は部屋を出た
「もう、これ以上善人が苦しむ姿を見たくないものでね」
そう残して