バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

28 直感

「……はぁ」
公園のブランコに揺られ、マヨイはため息を吐いた
信じたくなかった、今まで自分を助けてきてくれたヤヨイたちが父を奪ったなどと

「何も考えずに出てきちゃった。どうしよう」
マヨイはブランコを降り、公園を出た
人が多い街並みを歩く
明日は休日だ。夜であるにもかかわらず、人々が行きかっていた

ふと、写真館の前で足を止めるマヨイ
ディスプレイに映し出されるのは、幸せそうに笑う人、恋人、家族
いたたまれなくなり、マヨイは視線をそらした
その時

不意に彼女の横をかすめる姿があった
マヨイは思わず振り返る
灰色のパーカーの男が、人を割って走っていく

「……追わなきゃ」
どうしてそう思ったかはわからない
しかし、彼女の直感が、強く叫ぶ。あの男を追え、と

マヨイも振り返って走り出した
ぶつかる人に謝りながらもマヨイは男の背中を追っていく
何度も見失い、何度も曲がり角を曲がった
それでも自分の直感を信じて先へと進んだ

住宅地に迷い込んだマヨイ
見知らぬ土地で走り回ったせいで、帰り道はわからなくなっていた
それでも前を進もうとしたその時

「みぃつけた」
不意にそんな声が聞こえ、マヨイは立ち止まった
建物の陰から、先ほどまで追っていた男が現れた
「探してたぜ、マヨイ・ハヅキ
男はマヨイを、彼女にとって久しぶりの名前で呼んだ