バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

3 不慣れ

通報をききつけ街に出ると、多くの人々が逃げ回っていた
その人の波にちらほらと見える、動かない人影
兼森はどうしていいのかわからず狼狽えていたが、後ろから豆生田が抜き去り、人の波に飛び込む

「いいか、その動いてない人が人形だ! 容赦はいらねぇ、ぶっ壊してやれ!」
豆生田はそういうと、一番手前にいた人影を銃剣の先で貫いた
「剛くーん、そんなこと言っても何すればいいかわかんなくて新人くんが固まってるじゃないか」
飯伏がポンポンと兼森の頭を叩き、彼の腰の拳銃を抜いて彼に持たせた

「いいかい、新人くん。その拳銃で、動かない人の頭を撃ち抜く。簡単だろう?」
飯伏は指導するように兼森の手を取り、人影に拳銃を向けさせた
「さあ、撃ってみようか」
兼森は困惑した。今までに人を撃ちこそしたが、こんなに「無関係」な人がいる中で拳銃を使ったことがないからだ
それでも飯伏に諭され、彼は手前にいた人影の頭を撃ち抜いた

「そう、それでいい」
飯伏はにっこり笑って兼森の手を離し、自らの刀をすらっと抜いた
「後は一人でやれるね? 頑張りなよ、新人くん」
そう残し、飯伏も人の波に飛び込んだ

既に何人かの軍人が飛び込み、つぎつぎと人影を倒していく
兼森は拳銃を下ろし、ただ見ていることしかできなかった

その時
「! 新人!」
豆生田が叫ぶ。後ろから気配を感じ、兼森は振り向いた
両腕を振り上げ、兼森に今にも襲い掛かろうとしている「人物」がそこにいた
「あっ……」
兼森は反応しきれなかった

しかし、二人の間に割り込み、鞘で襲い掛かる人物の腕を弾き飛ばした軍人がいた
彼は軍刀を抜き、後ろの人物を蹴り飛ばして首をはねた
「……大丈夫かい」
軍服の男はこちらを向いた

「隊長!」
豆生田が叫んでようやく気が付いた
この男こそ、人形撲滅隊第4部隊を率いる男なのであると
「手を休めないほうがいいよ。今日の人形は数が多い。大したものではないから、確実に撃ち抜くんだ」
隊長に言われ、ようやく兼森は拳銃を持ち直した

「ごめんなさい」
「初めてだから、仕方ないさ」
隊長は軍刀を構えた