バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

4 感嘆

「初任務、お疲れさまぁ」
飯伏が兼森の頭をぽんぽんと叩く
どうにか人形を殲滅させ、それを抱えて軍部まで向かい、ようやく休憩をもらえた兼森は疲れていた
なぜ人形を持ち帰る必要があるのかと問うと、「今後の対策」とだけ隊長から伝えられた

「やるじゃねぇか、新人!」
飯伏が離れると同時に、豆生田がこちらにやってきた
「どうだ、人形っつっても挙動は人間と大して変わらないから楽だろ?」
「はは、そうですね……」
ひきつりながらも兼森は答えた

正直なところ、逆だった
「挙動が人間と似ている」から「一般人に見えて巻き込みそう」で嫌な気がしたのだ
それを言うわけにはいかず、ようやく一人になってため息を吐いた

「僕、ここでやっていけるのかな……」
ぽつりと一人で呟く兼森
彼はコーヒーのプルタブをひき、ゆっくりと飲み下した
砂糖が入っているはずなのに、とても苦く感じられた

「兼森君」
後ろから声をかけられ、兼森は振り向いた
そこには、先ほど自分を助けてくれた隊長が立っていた
「あ、はい」

「初任務、つらかったね。突然で申し訳なかったよ」
ふいにそんな言葉をかけられ、兼森は息を呑む
自分が足を引っ張ったのに、そんなことを微塵も感じさせない隊長の態度に、彼は感嘆した
「そんな、こちらこそ足を引っ張って申し訳なかったです」

「君は、そのやさしい心を大切にしてね」
隊長は小声でそう言った
何のことかわからない兼森は首をかしげる
隊長は微笑みを向け、そのまま立ち去った