バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

10 隠し事

「新人くんが人形に襲われたぁ?」
間延びした声で飯伏が言う
私服姿の兼森は、隊長によりそのまま基地に連れてこられ、目の前にココアを出されて着席している
「襲ったってわけではないんですけど……」
やや居心地が悪そうに兼森は言った

「んなこといったって新人、お前、隊長が介入しなかったら襲われてたかもしれねぇんだろ?」
豆生田の言葉に、兼森は頷いた
「足を引っ張るようで、申し訳ないです」
兼森はテーブルの下でこぶしを握った

「……あの、隊長」
兼森は部屋の隅でコーヒーを飲んでいた隊長に声をかけた
「「絶対時計」って、何ですか」
兼森は恐る恐るそれを口にした

「……知りたいかい」
隊長は兼森を見る。兼森はじっと隊長を見据えた
「あの人形、言ってたんです、「絶対時計」がどうのって。もし、人形が僕たちを襲う理由がそこにあるなら」
「そこまで」
隊長はカップをおき、ゆっくり兼森に近づいた

「「絶対時計」については、まだ現段階でははっきりいえる代物ではないんだ。すこし、時間がほしい」
「え……」
隊長はそれだけ言うと、兼森が止める間もなく部屋を出ていった

「変なこともあるもんだな。あの隊長が何も言及しないなんて」
豆生田が呟く
兼森は隊長が後にしたドアを、ただ茫然と見つめていた